コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応7-3

 振り返り、高台を見上げて、前方それからヨットハーバーを順々に視線を走らせ、テープをくぐった。ベンチに私は彼女と同じ格好で座った。空が見えて、数えるには小さすぎる明かりが信号みたいに明滅。スーッと海風があたりをさらう。今日一番の自然な冷気だ。心地よくて、息が深く吸える。非常識な行動だとは自覚ずみだ。理解?わかってもらうための行動ではそもそもないのだから、弁明とか弁解、説明は皆無だ。行動のそれぞれが理解の求めに従って構築されているとは思わないでもらいたい。規則違反だとは知ってる。でも、見えない所の小さな違反を見逃している誰かさんに指摘されたくはない。その秘密を暴露してもいいんだ。まっさらな人なんてこの世には、だって、いないんだから。けれど、一人はいた。あの人はまったく次元の違う人だ。私にはそう映る、見えた、垣間見えたんだ。行動と鼓動の狭間の希少な本性を。見ているから。知っているから。だって、私でしかわかってあげられない。誰だって、あなたをそんな目で見てはいのだから。あなたすらももしかすると希少さを使いこなせていないのかも。あるいは、あえて前面に押し出していないか。
 深呼吸だ。深い。肺が冷たい。ありえないけど、そんな感覚。
 打ち返す波は遠くに、近場では桟橋、コンクリートの港湾にぴちゃぴちゃと跳ね返る水。電車が通過する線路と車両の混声。だらりととろけそうだ。ベンチと一体化したら、私は彫刻のように景色の一部と認められるのだろうか。重い体を引き起こす。誰のためにこうして仕事を日々こなしているのかと、暇な時に考える癖がふたたびぶり返した。煙草もやめてしまった。どうしてだろう、家で禁じられたから?嫌われないように?私を優先する生き方はどこへ追いやったのか。