コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応8-4

「見つけたのは生徒さんですか?」
「はい、何人かがそこの階段を降りたときに見つけたようでして、私は列の後方を歩いていましたので、生徒が声を上げた後に駆けつけました」教師は時折、言葉を選び、溜めて記憶間違いを懸念し慎重に話した。仄かに、香水かその他人工的な香料を鈴木の鼻は捉える。
「生徒さんは死体に触れました?」
「可能性はあると思います。けれど、決して死体と知って興味本位ではなくて……」
 訴える教師の言い分を汲み取って鈴木は彼女の発言を制す。「わかっています。彼らが死体と関わりがないのは、明らかですし」
「あの、こんなこと、刑事さんに尋ねるのは少々気が引けるのですが……」言葉を濁す教師。
手帳にメモを取る鈴木が聞き流すように言う。「なんですか?」
「亡くなった方は大嶋さんとおっしゃるのではありませんか?」鈴木の落としたメモ帳への視線が機敏に、それもすぐさま教師に戻される。
「どうしてそれを、知り合いですか?」顔が近づいたと自覚がある。しかし、鈴木は構わず答えを求めた。
「以前もお会いしたことがありました」
「いつごろですか?」
「もう五年ほど前でしょうか」
「どちらで、あの大嶋さんはと、どのようなご関係です。なぜ知り合ったのです、その経緯は?」畳み掛けるような質問に教師が顔を背けるまで身を引いていた。鈴木は我に返る。「ごめんなさい。すいません、取り乱したりして。いつもはこうじゃあないんです、その情報が少なくて……」
「大変なお仕事ですものね」いまどき口に手を添えて笑う女性がいたのだと、鈴木は彼女の微笑と対面して思う。いいや、もう一人いるではないか、喫茶店の才女が。
「いえ、そんな大したことでは。あのそれで、話を戻しますけど、知り合ったきっかけは?」
「ああ、はい」彼女は首を十度ほど傾ける仕草でストローハットの下でおっとりとしゃべる。「大嶋さんは私の生徒のご両親です。教育熱心なお母様が印象的で、父親参観のときのお父様の違いようにびっくりしまして」