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店長はアイス  過剰反応8-7

 鈴木は高台の階段を上る相田を追った。現場保存は制服警官が任せた。そう言えば、昨夜は現場は誰も見張っていなかったのかと、思う。
「相田さん、殺人事件の現場にその事件当日の夜に警備がつかないのは、変でしょうか?」階段、広くなった踊り場で汗を掻いた相田が顔を向ける。
「殺人と自殺両面の明確な区別がつけられてない状況で人員を動かせば上層部の文句は確実だ。それに現場は密室などという特殊性を帯びた環境ではまるでないし、現場も入念に調べた後だ、これといった証拠は鑑識が採取済み」
「どうしてここでなくちゃいけなかったんだろう。テープぐらいでは抑止力にならないのかぁ」
「事件現場で死んだのなら本人の望み、殺されたのなら紀藤香澄の模倣」肩をすくめて相田は階段を上る。
「そうすると紀藤香澄は殺されたってことでしょうか?」
「さあな。ただ、大嶋八郎の死と紀藤香澄とのそれが同一犯による犯行の場合、二つの事件が他殺による犯行であると、大嶋の死は紀藤香澄の事件の模倣だろう」
「大島も自殺ですか?そもそも頭を自分で殴れますかね?」
「自分の頭ではないと思っていたら殴れるかもな」
「目隠しをしても自分の頭の位置はわかりますよ、腕だって肩だって明らかに顔に凶器が迫ってるのは感じ取れます」
「降りる時に階段を踏み外したら、がくってよろけるだろう?あれと似ている、予期せぬ衝撃は結構強力だ」
「ううん、言い返せない。なんだか、納得したいようでしたくないような……」
「推論大会は情報が出揃ってからだ、それよりも帰りはお前の運転だからな」
「いやですよ、相田さんの車、ハイテク過ぎて緊張する」
「お前のポンコツと比べるからだ」
「ああもう、運転席には絶対に乗りません」