コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応9-3

 自然を信じきった店内の装飾。熊田は一人で思いを馳せる。子供の頃に憧れた秘密基地を思い出した。木の上、枝を介して不安定に板を無造作に紐で括りつけた子供二人がやっと座れる程度の空間。木の根元には、ダンボールと重い石がその四隅を風から守る。共存と言うよりかは、むしろその場所は自分たちで作り出した作り上げた、人の手を借りない特別な住まい。自室を兄弟と分けていた私には、いいや自室を与えられた仲間もおそらくはかわりなく、制限を離れた独立性に無意識に惹かれた。

 新しさを、この店には感じない。費用の面で新しさを断念したのだろうか。それとも、元々木のぬくもりを欲していたのか。ここはもう廃れている。言い方が少々悪いか。しかし、事実だ。たぶん、あの女性も廃れ具合は承知しているはずだ。だって誰が見ても趣があるとしか、褒める言葉が見当たらないのだ。廃れていく一方ならば、これからは十分な愛着が育まれる、そう信じているのかも。新築がちやほやされる時期をわざと嫌う。そこに焦点をあわせると、後はもう最高潮から落ちていくのみ。革製品が使用するたびごと、年月を経るにつれて味わいが刻まれるのを彼女はこの店に見出した。流行性デザインはやはりその時々のトレンドが製作者も無意識に組み込まれた見聞きした情報によって作品が作られてしまう。だから、数年でまったくのガラクタに変貌し、光の感度を失うのだ。鳥が鳴いていた。雨上がりだから。生きているかと仲間たちに呼びかけて、返事を待っているみたいだった。

 自然と体の作用に任せて熊田の右手が内ポケットの煙草に伸びた。その動きに種田が横目で切れ長の圧力を込めた瞳で射抜いた。

「吸わないよ」

「そう願います」ロックオンの視線が解除される。種田の横顔に隠れて人陰が登場した。熊田は立ち上がる。

「あの、こちらの従業員の方ですか?」

 二人の女性である。一人は背が高い、もう一人のがっしりとした体格の女性が答えた。「……、はい。そうですけど」不信感は当然。開店前にのこのこと店の中にまで上がりこんでいるのだ。