コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?4-1

 熊田と種田は保健室の生徒とに続き自宅で養生する生徒にも話を聞いた。

「訪問の意味があったでしょうか?」止んだ生徒の家を出て車に戻った種田が行動の意味を問う。

「あったかどうかの判断は事件が解決してからだ。それまではどれもこれもが可能性でパーツの一つだ。ねじが一つ余っても組み上がる」

「男性はなぜプラモデルに熱を上げるのでしょうか、また、棚にフィギアを飾ったりもします」

「作り出す過程に意味があって楽しむ。完成品はもう過ぎ去った過去、見返したり思い出したり眺めてたりはするけど、形そのものに変化を加えることはないだろう。これとは別に、フィギアは完成された作品。眺めるのはほんの一時、主に所有することに価値があるな。あとは揃えることに意味を見出す人もいるな。キャラクターをすべてそろえ並べる」

「ただのガラクタにしか私には見えません」

「誰が見るかによってすべてはガラクタだ」

「商業者に買わされている、そそのかされている感覚はないのでしょうか」

「幸せを感じて商品を作っているのならば買い手も喜ぶ、その発想が根底に流れる企業は商品を価値を無理やり算出し、マーケティングだけの指標では売り出さない。無論、そうではない商品も世の中には山と溢れている」

「いつか捨てます」

「ああ。しかし、それまでは宝だ」

 熊田と種田は紀藤香澄が残したウェブ上の記録を遡って書き付けた店を追う。車は一路東へ。真夏の海へと向かうルートの混雑を見かねて、普段は利用しない高速に進路を変更した。目的地のショッピングモールは数年前に開業したばかりの真新しい建造物、大きすぎる建物にありがちな駐車場の広さも複数箇所に分けて、敷地内と幹線道路を挟んだ場所にも専用の駐車場が作られたらしい。その駐車場が右手に確認できる、車を赤のランプで止めた。おそらくこの信号機も駐車場とモールを結ぶ経路、お客を運ぶ動線として新しく設置されたのだろう。前後の信号との間隔が狭く、道路は軽い渋滞を起している。信号を過ぎて建物の側面を走り、先の信号を左折、すぐに見えた駐車場の入り口、スロープを歩道の通行者を避けつつ上る。出口側は車の登場を警告する黄色いランプが点灯していた。