コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?4-2

 建物、入り口近くのスペースは埋まっている。車に乗り、数十歩の距離も歩きたくはない、と平然といえてしまう神経を疑う。そもそもお前だけの場所では決してないのだ。誰に言っているんだろうか、熊田は空いた場所に車をそっと止めた。種田が寝ている。寝息を立てて。

 動作音、買い換える前の車とは雲泥の差、車の駆動は低速域の静動性は飛躍的に向上している、その証拠が種田の居眠りである。種田が起きる前に、タバコを吸おうと一本を加えると、彼女が動き出した。「……っ、すいません。寝ていました」正直に告白するのが種田だ。

「長時間飛行機に乗って寝ない奴はいない、誰だって眠る。何階だ?」紀藤香澄が訪れた店を熊田は質問する。サイトで紀藤香澄の記録を読んだのは種田である。

「二階です。左手の入り口が最短距離です。正面のエスカレーターを上がってください」

「一本吸っていいか?」熊田は車内で同僚、それも部下に許可を求める。熊田は同僚と仕事を教える部下との区別がない。押し付けがましい先輩風は最も忌み嫌う。

「どうぞ」種田は煙を嫌って外に出た。熊田は火をつけておもいっきり煙を吐く。数センチ風通しのために下ろした窓をすべて開く。足の長さを強調する女性が麗らかにドリンク片手にサングラスを掛け、それでも日差しが嫌いなのか建物の日陰を探して歩いて行く。夜道を警戒心をまとわせて歩く姿が思い浮かんだ。姿見で肌の露出を抑えることを第一候補に上げるとその心配をせずに帰れるはずだ。ファンションだから、そう反論がもたらされる。見られていることはたしかでお気に入りの服装なのだろうが、誰も見ていない自分だけの世界ならその理屈も通用する。しかし、大勢がひしめき合っている。魅せつけるつもりがなかろうとも、誰かの視界に入ってしまうのだ。見るなという言い分は、見せることを完全に否定してから言うべきだろう。自らの信念を服のセンスをこれが着たいのだという情熱を。おそらくは、流され、そして情報に振り回されて着ている、着飾る。着せられているのも知らずに。

 熊田は灰皿を引き出し灰を落とす。車内で吸わないためには、新車購入の際に灰皿を取り払ったモデルを注文すべきだろう。ポンと考えが飛ぶ。いつものことだ。その場に留まるのは健全な思考とはいえない。

 種田は、建物の最上階、空との切れ目を首を傾けて眺めている。空に散った機体に敬礼で別れの挨拶、そんな風にも見えた。煙を吐いた、残り半分ほどで見切りをつける。灰皿に押し付け車を降りた。