コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?4-5

「ええ、不必要な情報はなるべく保存しないと決めているの、誰かさんと違って大量な情報はもう私には必要ないから」美弥都はカップに手をつける。テイクアウト用の紙コップである、途中コーヒーを持って店を出るつもりだったのか、と熊田は思う。

「ちがいますよ」顔を上げた美弥都が否定した。熊田は美弥都に心を読まれ慣れている。これは単なる可能性の高さに基く確率論、決してまじないや霊能力などの抽象的な力によるものではないのだ。コーヒーカップに注いだ視線とこれで発言までの結論に導いたのである。「二杯目が安く飲めるそうね、それを店を出る際にこのカップで頼もうと思って」

「正確な日付を覚えていないのか?」種田の美弥都に対する攻撃的な口調。顔のパーツで彼女の口だけが動く。種田は道を逸れずに歩いていた。

「ネット上の日記に記録が残るのなら、そちらで確かめればわかることでは?」

「あなたの記憶違いかもしれない」

「面倒ね」美弥都は肩をすくめ、美弥都に見惚れる店外のお客を一瞥し、答えた。「……六月八日」

「確認だ」熊田は種田にサイトを確かめさせる。

「無駄なやり取り」美弥都はため息に混ぜて言葉を吐くとまた視線は本に移った。

「それで……その、何か気づいた点があれば教えて欲しいのですが」熊田は話を事件に戻す。煙草を取り出そうとポケットに手をやると、美弥都が指摘した。

「禁煙ですよ、このお店は全面。私も灰皿をお願いしたら笑顔で断られたの」

「あっと、そうでしたか」熊田は手を戻す。

 美弥都はしっかり熊田の要求に応じる。「鑑識の結果をほぼ活用していないとお見受けしますが?」

 熊田は喫煙の話題に取り残されていたため、美弥都の変わり身の早さに思考がダウン、状況の把握に多少のタイムラグが生じた。「現場周辺の調査でも被害者の血痕は発見されずに、その他証拠も何一つ見つかっておりません。解剖の結果も頭部損傷の出血が死因と報告を受けたのが最後、これといった情報は現在までには知らされていないというのが、現状です」

「二人目の方は同じ場所で亡くなっていたのですね?」念を押して美弥都がきく。

「ほぼ同じ場所です」

「マスコミは殺された状況を報じていましたか?」

「彼らに流す情報はごく僅かです。死因はまだはっきりと発表してはいません」熊田は続けて言う。「なぜ、ベンチで亡くなっていたと思われますか?」

「それは自殺と捉えたお考え?」

「正直、判断には困っています」熊田はコーヒーを口に含み、かるく腕組み。

「どちらかに決めたがるのは悪い癖です。事実は二人の人間が命が奪われた。殺害と自殺の方法が犯人や自殺の理由と直接リンクするとは思えません。むしろ、ずれているのが一般的です」

「殺害には証拠が必ず残ります。完全に一つの証拠も残さずに現場を去るのは不可能です」