コンテナガレージ

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店長はアイス  死体は痛い?7-1

 立体駐車場の七階、平均的なビルの七階よりも高く感じる。鈴木は前後左右を、車から降りる前に確認、先にドアを盾に前方からの射撃に備える。備える?誰に狙われているのかさえ、皆目検討がつかない。二件の死体が確実に関連を匂わせてる、それは揺ぎ無い事実だろう。これ以外鈴木のみに危険が及ぶ事態は考えても、知り合いに紹介してもらった女性に返答のない、メールを送り続けていることぐらいだろう。これだって、命の危険が肌で感じる殺意を相手が抱くとは思えない。数日前に送ったメールはアドレスの変更により、送り返されたのだ。

 エレベータは螺旋の上り坂を登った先、フロアの正面奥の左手。フロアの広さはざっと二十×五十メートル。運がいいのか、それとも敵方が仕掛けた罠か、エレベーターにもっとも近い三列中央の駐車場所がぽつんと空いている。左隣が背の高いワンボックス、前と左斜め前は乗用車、右、後方側が周回路。鈴木は相田に囁く。

「大丈夫みたいですよ、僕が、エレベーターのボタンを押してきますんで、相田さんはドアが開いたら走ってください」

「何を考えてるのか、教えろよ」

「いいから、僕を信じてください。いきますよ」鈴木は、律儀にドアを閉めて、走り出した。格好は無骨で腰を屈めて無防備、遮蔽物のない、矢印と横断の白線が描かれた地面を通過、黄色いドアのエレベータに行き着く。壁に張り付き、できるだけ動きを止める、階下を指す矢印のボタンが光る。運転席、ドア越しの相田が表示階の数字を目で追う。

「今です!急いで!」到着音、と同時に相田が勢い良く車から飛び出す、鈴木は相田の後に光が差し込む箱になだれ込んだ。相田が一階のボタンを連打。

「ダメですよ、二回押したら、消えちゃうんです」

「知るかそんなこと」相田の息が上がっている。ドアが閉まる寸前までフロアの状況は動くものさえ確認できなかった。取り越し苦労だろうか、鈴木は重力を感じつつ考察した。計ったように相田が呼吸の切れ間に言う。「ドアに弾痕があった、車が撃たれたのは事実らしい」

「犯人でしょうか?」鈴木はきいた。

「部長かもな、はぁはぁ」緊迫した状況下での笑い。相田は冷静さを保っている。

「二つの事件を引き起こしたのが部長だなんて、……ありえないこともないか」鈴木は壁に背を預けて呟いた。

「何をしでかしても、あの人なら驚かない」