コンテナガレージ

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店長はアイス 幸福の克服1-4

 部屋には戻らずに、駅に向かう。隣接するショッピング施設一階のファストフード店で購入した本を取り、続きを読む。コーヒーの苦味が仄かに口に広がる前にスッと喉を通過。加糖されたコーヒーでは、甘さが喉に張り付く。やはり、コーヒーはブラックに限る。

 読書を再開。席は一番奥、壁のスタッフオンリーに向かって座る。はしゃいだ声も本に入り込むとミュート。幸せはやはり自分次第であると作者は語っているようだ。世界は己の見方でどうとでも変わる。それに体と精神の関係性について。死期を早める過剰な運動も最近では特に見かける。派手な装いは車が発見しやすいようにとの配慮であったが、もう現在ではファッションが主な機能を担っている。効能やもたらされる効果は二の次にされている。知っている自分を見て欲しいがための通過点でおそらく数年後は見向きもしていない。それでいいと、たぶん言うんだろう。そのときを楽しめたら最高なんだと。私はその答えにいつも納得の頷きを獲得した覚えがない。もちろん、瞬間を生きるというのは理解できるし、過去には戻れないのだから今を尊重すべきだと思う。しかし、だからといって過去の系譜が無残に投げ出されるのはこれまでの私に申し訳が立たない。作り上げた関係性を大切にしているのではない。前の私とのつながりが見出せないのだ。隣に移るのは簡単なことで、でもそれを生きているとはいえない。突き詰めない行為は白状にしか見えない。どこにも私の名残も残り香も雰囲気も体温も感じなくて、無に等しい。笑っている顔も、だから平坦で凹凸がなく、深みも、まして浅くもない。流れるだけだから。行き先は運んでくれるから、到着時刻も所要時間も知らない。だから到着時刻を平気で人に聞けてしまう。調べない。その労力すら人任せ。