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店長はアイス 幸福の克服2-4

「死に場所がベンチだった、それだけでしょう。あなたがしゃべった内容は憶測に過ぎない。こんな言いがかりで殺人の容疑をかけられるのは心外です。失礼します」
「待って下さい」テーブルの奥に回った熊田が引き止める。「まだ話は終わっていません」
「令状は?」股代は天井を仰いで言う。片方の手が腰に当てられる。
「ありません」
「では、引き止める権利は今の、今のあなたたちにはない、ということです」強調した言い回し。
「ですから、これから事件の全容をお話しようと思っているんです。わからない人ですね」熊田は明らかに股代を挑発、怒らせる狙い。
「警察に後で抗議しますよ。皆さんを名指しでね」
「結構ですよ。どうぞ座ってください」
「なんか、熊田さん、日井田さんを意識してませんか?」鈴木がこっそりと相田につぶやく。
「トレースしたんだろう」
「性格をですか?」
「考え方」無表情の種田がぶっきらぼうに言う。「人格のトレースによる論理展開の巻き込みです。あの人が、日井田さんの考え方を頂点に、そこから導き出される可能性を逆に辿っている。熊田さんが導いた論理展開ではなくても、ベースとなる思考構築は自動的に選択、抽出、導入、比較、展開、仮説、理由、論理とあたかも彼女が示した答えそのものが現れる」