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店長はアイス 幸福の克服2-7

「その通りだ。頭蓋骨は放射状に割れていたのではない。局所的な穴が開き、その周辺に僅かにひびが広がっていた。人体は固定された状態で凶器が衝突、これが鑑識の見解です。ただしかし、どうにも腑に落ちません。よく考えても見てください。同じ場所で同じ手法で人が死んだ。それはつまり、同一人物による連続殺人を連想します。しかし、我々はそのような体制では動きませんでした。何もおかしくはありません、紀藤香澄は大嶋八郎に殺害されたと考えたのです。そして大嶋八郎は命を絶った。しかし、そこには誰かの介入が必要となる。現場はテープが張られ、常駐の警官はいませんでしたが、警官は数時間おきに見回っていました。ここで疑問です、自殺とその証拠品の回収を大嶋八郎が一人で行えたでしょうか。警察の関係者が犯人という線も考えなくもありませんが、彼らのアリバイは不法侵入の取締りで証明されました。さあ、大嶋八郎は一体誰の手を借りたのでしょう。犯人にとって誤算だったのは、証拠品を紀藤香澄のときのように真似を重視したあまり回収してしまったことです。自殺ならばそこで道具なりを置いていけば我々はすんなり自殺と判断をしたでしょう。殺されたと見せかけた偽装が、裏目に出てしまったのです」熊田は言葉を切り煙草を咥えた。股代に禁煙かどうかジェスチャーで聞く。股代はため息、立ち上がって、ステンレスの灰皿をテーブルに投げ出す。

「本来は禁煙です。その灰皿もあなたに差し上げます。灰と一緒に持ち帰ってもらえると助かります」力なく股代は言う。

「どうも。責任を持って持ち返ります。この一本を吸わないことにはどうにも調子が出なくてね」