コンテナガレージ

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あちこち、テンテン 6-2

 頭を振る。狭い、窓口を出た。じっと座っているからだと、体を動かす。回転機構の真円のアルミ、滑り止めの凹凸。危険を知らせる黄色いランプと、食物連鎖の頂点に立つ肉食動物のイメージカラー、黒と黄色の縞々が車の出入り口を囲う。黄色の回転灯は赤色と緑もあったように思うが、それぞれ効果が異なるのだろう。緊急性を伝えるという意味ではどれも同じなのでは、色の違いを見出せない、宅間隆史である。
 ぼんやりと外をまた眺めた。人が通過。うん?宅間は疑った。顔を突き出す。わざとらしく目をこすってもみる。少女が姿を見せたのだ。通行人のように左から右、右から左の登場ではなく、上から下の落下による登場である。ここはビルである。一軒家のように庇や二階の窓は存在しない。本当だろうか?いつも見逃しているビルの外観を思い出す宅間であるが、一向にビルの詳細な形、色、窓の数や大きさは浮かばない。見ているようで何も見ていないのだった。
 少女は降り立つ、しゃがんだままだ。傘を持っている。黒い傘。女らしく、腕にかけている。緑の服装。横顔が染まらない白さを誇る頬。二つに結ばれた髪。映画のワンシーンみたい。
「そこにいたら危ない」宅間は注意を促した。避けるようにというのは少女のためを思っても、安全を考慮した呼びかけではない。仕事の邪魔になるから。いつだってそうだ。お客のためといいつつ、人を言葉巧みに騙していたのは誰だろうか、ほかならぬ私ではないか。本心ではない。ただの金銭の絡んだ、大々的な金銭を介した仕事という名の搾取。名前が知られてサービスが一般的であるから素直に、疑いを持たずにお客は金を落としていく。