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がちがち、バラバラ 7-6

「宅間さん?」
「ああ、ええ。この子です」
「少女と会話はされました?」熊田が写真をしまいながらきいた。
「はい」
「どのような?具体的に覚えてることでけっこうです」
「ペンキのような塗料、赤い塗料を撒きました。SOSの文字をそこに書いて、お前は生活のために生きていると」
「それから?」
「自分を思い出せ、そんなニュアンスだった思います」
「大体ほかの方の証言と出来事は符合する。信じてもらえないとは思えません、私が聞いた限りでは。ほかにまだ隠していることがあれば、おっしゃってください。くだらないと思うことかどうかはこちらが判断します」
「真後ろ」宅間は深爪の人差し指をピンと伸ばす。「外灯の脇から高さは二メートル程度、カメラの映像が私が少女と出会った場面を映していた。夢の内容です。ただあまりにも鮮明で。ある人には記憶を私が勝手に解釈し付け加えて組み直したといってました。しかし、どう表現すれば伝わるのか……、女の子の赤い口元が頭から離れなくって。倒れたときも顔は見えていません。夢の中で彼女の顔が見えた。カメラに近づく彼女がはっきりと映ってました」
「倒れていたのはあなたではないのかもしれない」抑揚のないしゃべり、種田が言う。
「なんと、いいました?」
「そこに倒れていたのがあなたではなく、ほかの人物であったらカメラはあなたの視点そのものです。朦朧とした意識でならば、現在地の錯綜はまれに起こります」
「じゃあ、倒れていたのは……」
「ここを早急に調べる必要があります。こちらの責任者の連絡先あるいは所在がわかりますか?」