コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

レタリ-ピリカ-カムイ

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 8-1

「続き。見逃すとしても重要度は低いでしょうから最後に書きまして、ちょうこく家の安部さんは父親に国際的なちょこく家安部明をもつ芸じゅつ一家に育ったサラブレッドでした。紫綬褒章と人間国宝に推薦されながら断ったことで有名、日井田さんはご存知あり…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 7

業務日誌 八月十一日 担当<遠矢来緋> 背中は一様に丸い。応援要請、増員された捜索隊はホテルを林を山を後にする。 部屋にはお子様の着替えがそのまま残されておりました、囲炉裏にへたり込む着用していた衣服が見つかりましたので裸体を晒して捜索の範囲…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 6-2

「『ひかりいろり』だと特定された理由は?」鋭い眼差し、山城は裏表を持たない人種なのかも。「天窓は床と平行に屋根に嵌る。これに屋根に上がった者の心理を想像する、答えは自ずと出る。天道虫の習性に近いでしょうか、頂上を目指したい、上がった先は平…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 6-1

二枚目に書かれた文章が脳裏を過ぎった、彼女にとっては造作もなく記憶し収めた画像を一枚脳裏に引っ張り出しておしまい、目の前に現物があるかのようにそれは鮮明であり脳内に留まる限りは取り込んだ記憶そのもの、劣化とは無縁である。 勘違いにもほどがあ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 5

八月十五日 九日を振り返る、手帳の引き渡しは延期となりしばらくまた荷物が増える。ついでに書いてみよう、気まぐれだ、途中でペンを置くこともありうる。『失踪』を遠矢来緋が誰に訊かれるでもなく自発的に休憩室、木質のテーブルに語った内容が顕わ、ふと…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 4

息せき切った、何年ぶりに切れた息だろう、これが快感に思えるランナーは死と寄り添う機会を望んでいるのだ。 フロントの係員の手を引っ張る、同行を強要する。走りながらエレベーターに乗り込み事情を話し、了承を得る。ときん、鼓動が打つ。 神を信じたの…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 3

「日井田さんへ もう一件不振な出来事が発覚しました。とにかくこの一行を読んだら真っ先に『ひかりいろり』へ向かってください。あなたの娘さんの生死に関わります。実は二年前、死亡事件の三日後に少女の失踪事件が起きてました。日井田さんにお渡しした兎…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 2

弁護士さんにこの日記を渡す前に休憩の機会がございましたので、いつももてあます暇潰しに最適でありましょう、今日起こった騒動を書き加えることに致しました。ホテルを離れた、これはいつのことまで遡りましょうか、手繰り寄せるあたり相当月日が流れたか…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-6

「だが凶器、死因は水と判りきっていて水自身が意思を持ち立ち上がり襲ってはこない、だから安心だ、意見は理解してます」「関心云々は部屋に宿泊した酔狂な人物がたまたま押しつぶされ寿命を終えた。そこに行かなければ、行くはずもなく、行けるわけがない…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-5

十和田へは繋がる、美弥都の端末はホテル内では不使用であり、ならば当然部屋に置きっぱなしが定常。鈴木は十和田に伝言を頼んでいた、出会うことを見越した彼にしては用意が良すぎるようにも思うが、……十和田が調べている調査のさわりを鈴木が知るのならば…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-4

「遠矢来緋、二十六、美術大学卒、父子家庭に育つ。旧土人の血を引く、彼の地の末裔。父親は族長の孫にあたり標準並みの高等教育を受けた識者という家庭環境が彼女の思考形成に多大な影響を与えた。彼女は物語りに育てられた。幼少期、絵本の代わりにカセッ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-3

「この車は電気で走る、タイヤを動かす動力はモーターだよ」「知ってる。ミニ四くにのせるよのよね」「ミニ四駆って僕ら世代のブームだと思ってしましたけど、今も流行りなんですか?」「さぁ。テレビを見ませんので」「奇遇ですね、僕もテレビはうっぱらっ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-2

起こすと損だ、美弥都はナマケモノをイメージ、自堕落な方ではない。胸元のポケットから喫煙道具一式を二つ指でつまみマッチを擦った。二本目のタバコを吸い始めた頃、タクシーをこのまま待つか、回復した脚力を使いホテルに戻るか二択を思い浮かべた時だっ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-1

「ホテルのお姉さん、物知りね」日井田美弥都と室田海里は、植物観察の道中、遠矢来緋に出くわす。屋外で出会った彼女は海里の鋭い観察による服装の指摘を受け、休憩時間に男鹿山に入ることを吐露。それならばと海里は図々しく同行をせがむも、遠矢は二つ返…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 12-2

助けられたのでしょうか。見放したのでしょうか。二人に出くわしたのでしょうか。昔聞かされた物語がこの頃よく思い出されます。どれなのですか、どれであるべきなのでしょうね、どれであったら最良なのかしら。だれにとってか、それも考慮に入れるのですよ…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 12-1

八月九日夜 朝にこれを書く。 ある人が私を訪ねた。「探偵をやっております、十和田と呼ばれてます。お父様のご依頼で伺いました」「なんでしょう」「これを渡してくれ。理由は聞くな」左手にぶら下がる包みを差し出された、紙袋だ、受け取る。「そうですか…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-5

二年前がことの起こり、発端である。靴紐みたいにきっかけを紐解く、自ずと模倣者あるいは犯人の思惑とやらは自由気ままに片側先端の程よい厚みと硬さ、蝋の絞りがあちらから気を利かせ手を振り姿を現す。確証はない。何しろ事件を推し量るなど私が望む本分…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-4

。「午後の四時から五時の間にチェックインをして、それから三十分から一時間ほど持ち込んだ仕事を片付けて、ああこれは雑誌のコラムを書いたの、医療関係者から見た優良病院の見分け方っていう記事ね。まだ連載続いてるの、良かったら一冊いかが、増刷を重…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-3

「あの日、同業者とのお見合いを土壇場でキャンセルしたんだった。約束は親が勝手に日取りを決めて前日に……用意周到よ。私の休みを、親の病院が勤め先だもの、知ってて当然。半年前兄さんが誕生日の記念に取ってくれたのを無下にもできない、それで宿泊を選…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-2

「質問を伺いに来た、と先ほど申し上げました。忘れていたのであれば、はい、確認のために答えましょうか?」「いちいち気に障る言い方っ」サイドテーブルが小気味よく音を立てた。まるでそうず。「過去を蒸し返す暇があるのかしら。次の襲われるのは私たち…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-1

彫刻家安部は見当たらない。ふくよか、熊の右わき腹を確かめた。彫刻は人の作り方に似ている。大きく作り、そこから不要な箇所を削る。蛙のような水かき指の腹に、細胞分裂初期の段階では見られる。 しかし、美弥都は音がぱったり途切れた石の通路を振り返る…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 10-2

店に入る。階段の最上段で何気なく店内を見渡す気分に襲われた。昨日との差異を取る。いつもだ、過ごした昨日の仕事場は初見に思えてしまう。子供の気分、見るもの手にするもの出会うことのあらゆる事象が新鮮で初めてに感じ取れる。それとは別に昨日と地続…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 10-1

滞在五日目。美弥都は普段の出勤時刻に合わせ部屋を出た。施錠を確認、窃盗に遭って困る物など携帯をしない彼女は、入室について就寝前にたどり着いた論理を実践に移した。腕に巻く腕輪型のこのホテル特有の鍵、電子錠という代物。鍵をはずす機会はシャワー…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 9-2

<木霊眼科・内科医院> ―診察券― 氏名:兎洞 桃涸 NO.10925 飛び跳ねた意味がつながった。けれどますます疑念が渦巻いて仕方がない。作りこんだ声で呼ばれる、診察代を支払う、来月改築工事で移る近隣のピルの住所を教えられた、笑顔だ、不具合が生…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 9-1

八月九日 愛車ランチアに乗り込みドライブへ繰り出す。当てもなく故郷のS市を目指す羽目になった、選ばれた過去の進路に従って車を走らせる、僕のルール。いつ決めたかは定かではない、破棄も自由だとは思うが、仕事と別れた五日目に早くも僕は今日の目的を…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-6

美弥都はベッドを降りて店に向かった。カウンター、裏返す灰皿にちぎったファックス用紙を折り重ねて火をつけた。感熱紙はじわりと黒色を熱源を離れて白を覆う。火の高さを想定して、細かくちぎる紙片がわずか数秒に消え、去る間際赤い輪郭を灰皿に残してい…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-5

休かに日井田さんと会えると知れて、正直おどろきはかくせませんでした。フロントの支配人に係員のしょう介を受け日井田さんの来訪を聞いたときはこれは運命でないのか、と軽くはなであしらわれる、そうぞうはつきます。それでもうれしいことはかくせません…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-4

五枚目を手繰る。「日記の内容(彼女は目に何らかのしょう害を抱えてる)が真実だと、二年前の目げき証言は非常に疑わしい内容に一変してしまいます。視界の欠損が事実ならばドアのすき間をのぞいていた彼女の立位置とどちらの目で見ていたかによっては、はい…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-3

三枚目、文字を拾う。「天窓といろりは可動式なのでは、と思いました。意識を失いかけたときおぼろげに煙を見たんです。もうろうとした意識、混だくしていたので、確証は低く捜査の足しにもならないでしょうが、襲われ生き残った唯一の被害者の証言だと大目…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-2

昨夜美弥都は『ひかりいろり』を今一度遠矢来緋を従えて室内を調べた、係員の本分を彼女はまっとう、突発的なドアの封鎖に体を廊下と室内にまたがって遮断を防いでいた、システム管理に事情は伝達済み、警報のみを一時的に解除していた。レールを左へ滑る、…