コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

自作小説-店長はアイス

店長はアイス  死体は痛い?11-2

「店に直接聞いてみたらどうですかね」鈴木が言う。「種田、きいてみてよ」種田は熊田に無言に視線を送る。鈴木の頼みを聞くべきかの判断を上司である熊田に判定してもらう、そういった視線であった。決して浮ついた異性への粘土の高い視線ではない。 「仕事…

店長はアイス  死体は痛い?11-1

「いました、いました」店のドアを入るなり鈴木が高い声を上げた。窓に面したテーブル席に鈴木と相田が腰を落ち着ける。熊田のとなりに相田、種田の隣に鈴木が座る。冷たい水を運んだ店長に二人はアイスコーヒーを注文。水を一気に飲み干した鈴木が事のあら…

店長はアイス  死体は痛い?10-2

「地下一階、クリア。対象者なし。一階に向かいます」 「了解。一階の出入り口の現状?」 「異常ありません」 「一台も外に出すな」 「一階の捜索を開始」 「二階に向かいます」「三階、四階とも対象者確認できません」 「遅い!二名は先に上階を捜索」 「了…

店長はアイス  死体は痛い?10-1

「後発部隊、到着。これより地下から捜索を開始」 「了解。相手は武器所持の可能性あり、武器所持の可能性あり」 「了解」 動き出すまえに車両を降りた。改札近くのコインロッカーへケースを押し込む。もう手にすることもない。回収は別の人間の役目。トイレ…

店長はアイス  死体は痛い?9-4

「ううんと、でもですよ、まだ襲撃の理由にまでは繋がらない」 「……威嚇かもしれない。最初から脅しが目的で事件から身を引かせる算段さ。横転した車も演出だったのかもしれん」 「あれがですか?いいや、ありえませんよ。だって、こうぐるんぐるんって何回…

店長はアイス  死体は痛い?9-3

「お前が聞いていたんだから、そっちが普通、覚えているもんだろう。傍観者なんだから」 「こういうときに種田がいればなあ」 「お前、大嶋八郎の経歴を聞いていた」相田が思い出したように呟く。 「ああ、はい。プライベートな事を知らないのはおかしいかな…

店長はアイス  死体は痛い?9-2

「俺たちが殺されるとする……」 「縁起でもないこと、やめてくださいよ」言いかけた相田を、本気で鈴木が否定した。 「例えばの話だ、死に直面した熊田さんたちや上層部は捜査を継続するか、打ち切るか、の選択を迫られる。当然熊田さんは続けるだろう。しか…

店長はアイス  死体は痛い?9-1

一時避難間場所にて敵の出方、追跡の有無に神経を尖らせた鈴木と相田は立体駐車場を後に、熊田たちとの合流地点に急ぐ。相手の正体がわからない以上、警察内部に助けを求めたとしてもそこまで息のかかった連中なら糸を張り巡らせている。上司の熊田と種田は…

店長はアイス  死体は痛い?8

立体駐車場の七階、平均的なビルの七階よりも高く感じる。鈴木は前後左右を、車から降りる前に確認、先にドアを盾に前方からの射撃に備える。備える?誰に狙われているのかさえ、皆目検討がつかない。二件の死体が確実に関連を匂わせてる、それは揺ぎ無い事…

店長はアイス  死体は痛い?7-2

一階にエレベーターが到着した。そっと二人は外を覗く。最上階と異なり、一階は車の出入りが激しい。料金が低価格なのかそれとも、立地条件の優位さによる活気であるかは、鈴木はわからない。しかし、景色の動きは、逃げる側の心理として都合が良い。一台のS…

店長はアイス  死体は痛い?7-1

立体駐車場の七階、平均的なビルの七階よりも高く感じる。鈴木は前後左右を、車から降りる前に確認、先にドアを盾に前方からの射撃に備える。備える?誰に狙われているのかさえ、皆目検討がつかない。二件の死体が確実に関連を匂わせてる、それは揺ぎ無い事…

店長はアイス  死体は痛い?6-1

「申し訳ありませんが、急な仕事で会社を出なくてはならなくて、お話はもう済みましたよね?」ジャケット、バッグをPCとファイルを詰め込み、小島が言う。 「トラブルですか?」相田がきく。 「新商品の味に若干、バラつきが見られるので、これから本社に向…

店長はアイス  死体は痛い?5-8

「相田さん、灰が落ちる!」 「あああっと、危ない」 鈴木は眼を光らせる、前後の車両、反対車線、隣の車線、歩道の通行人、ビルや建物の窓に映る人影。 「狭いところでどたばた動くなよ、くそっつ、下に落ちた」車列が動き出す、相田は悪態を付きつつアクセ…

店長はアイス  死体は痛い?5-7

「湯のみですか。陶芸が趣味なのかな」鈴木は首をひねる。鑑識へ大嶋八郎の所持品はすべて送られて調べたはずだった。もう一度リストを確かめる必要性があるかも、鈴木はきつく瞬きを数回、頭にメモする。 「後、どれぐらいで着きそうですか?」車は反対車線…

店長はアイス  死体は痛い?5-6

「申し訳ありませんが、急な仕事で会社を出なくてはならなくて、お話はもう済みましたよね?」ジャケット、バッグをPCとファイルを詰め込み、小島が言う。 「トラブルですか?」相田がきく。 「新商品の味に若干、バラつきが見られるので、これから本社に向…

店長はアイス  死体は痛い?5-5

小島がはにかんだ。「研究はひとつだけではありません。いくつかの構想は頭の中でも同時に進めている。もちろん、実際に開発に着手できるのはその内の一つのみでし、体も、一つです。部下は皆、久しぶりの休日に羽を伸ばしに行きましたよ、会議が終わってか…

店長はアイス  死体は痛い?5-4

「食品開発の中心は、大嶋さんで間違いありませんか?他の方がそのぉ、力試しや新しい発想のために開発を任されたということはあったのでしょうか?」 「開発に上下の関係を作らないのが我が社の慣わしで、私やもっと若い社員の意見も取り入れてくれます。た…

店長はアイス  死体は痛い?5-3

商品開発、室内は研究室を思わせる光景だ。鈴木は研究室と名のつく場所を直接目にした機会はない。あくまで、ほとんどがテレビで紹介される大学などの研究室が主な情報元である。部屋の半分が食品開発のブース、調理台やステンレスの冷蔵庫、攪拌のミキサー…

店長はアイス  死体は痛い?5-2

「相田さん、きいてます?」 「何か言ったか?」 「僕より上の空なんてめずらしいですね。犯人のめぼしがつきましたか?」 「めぼしねぇ」相田はワイシャツを胸につまんで空気を入れる。「やはり自殺なんだと思う」 鈴木は速度を落として受付嬢との距離と図…

店長はアイス  死体は痛い?5-1

相田、鈴木が引き返した先は大嶋八郎の会社、breakfastであった。会社はS市中心部に近い場所にあるため、約一時間の運転を二人は余儀なくされた。高まる車内の湿度は相田の重すぎる体重の影響によるところが大きい。乗りはじめこそ、暑さで汗が止まらない鈴…

店長はアイス  死体は痛い?4-9

「あのう、煙草一本もらえますかぁ?」 「正気か?」熊田は言う。 「一本ぐらいいいじゃないですかぁ」薄っぺらな卑下。 「一本ぐらいを二十人に渡していたら、箱は空になる」 「なんだよ、けち臭い。ジジイ」 「未成年じゃないよな」 「あーああ、うるせえ…

店長はアイス  死体は痛い?4-8

「プロテクトは大切ね。けれど、攻撃を受けなければ、常時守りを固める必要はないのよ。オープンでいられる時間はいくらでもあるわ」 「咄嗟に再現はできません。そんなことよりも犯人を……」 「作り出すフィールドを事細かに汎用的、日常に張り巡らせていた…

店長はアイス  死体は痛い?4-7

「憶測です」種田がきっぱりと言う。前にも聞いたセリフだ。「被害者たちの接触は未だに確認が取れていません。仮に二人が情報を共有する間柄であっても二人同時に死を迎えたがっていたことは、あなたの想像です」 「大嶋八郎が現場を離れ、出社したのは、大…

店長はアイス  死体は痛い?4-6

「不可能ですか」美弥都は言葉を切る。席を探すお客が美弥都を見て噂話をこちらに聞こえる音量で通過。美弥都を背後からまだ見ている。「しかし、その証拠は見る者つまり有能な観察者によって始めて証拠に格が上がる」 「証拠となるような物証はあがっていま…

店長はアイス  死体は痛い?4-5

「ええ、不必要な情報はなるべく保存しないと決めているの、誰かさんと違って大量な情報はもう私には必要ないから」美弥都はカップに手をつける。テイクアウト用の紙コップである、途中コーヒーを持って店を出るつもりだったのか、と熊田は思う。 「ちがいま…

店長はアイス  死体は痛い?4-4

「ご無沙汰しています」 「あら、刑事さん。捜査ですか、大変ですね」 「プライベートです」 「そちらの方とですか?ご冗談を」 「ご一緒しても構いませんか?」日井田美弥都は本に落とした視線を店内に注ぐ。大きな茶色い瞳でゆっくりとまばたき、そして再…

店長はアイス  死体は痛い?4-3

「待たせた」 「そちらのドアです」 数メートル歩き、エスカレーターを正面に捉えた。わずかに種田が先を歩く。平日は洋服や雑貨の店舗に人はまばら。店員に詳しく商品についての話を聞きたいのならば平日が狙い目。もちろん、店員の商品に対する掘り下げた…

店長はアイス  死体は痛い?4-2

建物、入り口近くのスペースは埋まっている。車に乗り、数十歩の距離も歩きたくはない、と平然といえてしまう神経を疑う。そもそもお前だけの場所では決してないのだ。誰に言っているんだろうか、熊田は空いた場所に車をそっと止めた。種田が寝ている。寝息…

店長はアイス  死体は痛い?4-1

熊田と種田は保健室の生徒とに続き自宅で養生する生徒にも話を聞いた。 「訪問の意味があったでしょうか?」止んだ生徒の家を出て車に戻った種田が行動の意味を問う。 「あったかどうかの判断は事件が解決してからだ。それまではどれもこれもが可能性でパー…

店長はアイス  死体は痛い?3-7

「誰が好き好んで働いていると思っているのかしら。女の大半は、家庭を望んでいる。そのための布石で仕事をしている。あわよくば夫に給料それも切り詰めないリッチな生活を夢見る。だから、店長がもてはやされるの。仕事はできないかもしれない。けれど、生…