コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

小説は大人の読み物です。 <「する」と「できない」の襲来 3>

途中まで掲載した小説「45 EXPLANATION(かいしゃく)と規則(rule)」

の続きです。

良ければこちらも最後まで読んでみてください。

 

 

「する」と「できない」の襲来 3

  <緊急報知> 

 O市特別捜査課宛

 五月二十七日午後十一時四十五分頃、S駅東中央広場(concourse)内で殺傷された成人男性を発見、首及び皮膚がつなぎとめる左腕は離析であった。打撲痕は認められず頚部の切断が致命傷と思われる。前腕の切断による精神動揺(shock)死の可能性を鑑識報告が『致命傷である頸部切断に生体反応の痕跡あり』を根拠に否定した。切断に用いる刃物の容体は鋭利な日本刀が有力、刃先の短い小刀(knife)は除外。筋肉組織と骨の切断面(添付資料㊀)を参照されたし。 

㊀ 一・全身 二・顔(寄り) 三・切断部位の頸部と胴体・肘関節と左前腕 四・地下から床に張着(はりつ)く右頬骨の寄りと全身(床は半透明の強化硝子(acryl glass)、S駅職員談)。

 本日五月二十八日よりO署特別捜査課へ当該事件における捜査権を委譲する旨、ここに通達する。尚これは決定事項であり今後の事件に関わる責任等の一切をS市警察は放棄することを予め表したと捉えよ。加え、文書の受け取りを許諾とみなすと同時に、現刻をもって伝達の完了を告ぐ。

 順次各捜査員の情報を吸い上げそれら精査が後、捜査情報の受け渡しとなる。そちらからの要請には文書の到達時点で締切り、規定に従い非応答をとるため無意味な問い合わせは控えること。

 

「電子化って便利な言い方ですよね。冷たい報告は二倍増しで冷たく感じてしまいます」

「いつかはやってくる。早くに対応しておいたほうが、degital(デジタル)世代の呆れ顔に鉄拳を下す手間を省けるしな。それにだ。専門的な知識を持たずして今時の新機種は操れてしまえる親切心を身に宿す。離陸か待機、旅券(ticket)の所持そのものが行使を判(わ)けた」

「だからといってですよ、一方的過ぎませんか、あんまりですよ。僕らに捜査権が移った訳をなんで引継書に付記しないんですか?」

「後輩のお叱りを受けてるのは俺がその張本人だからか?」

「違いますよ。意見をぶつけてんです。そりゃ少しは言い過ぎたかもしれませんよ、だって昨日まで三週間を放し飼いにそこへいきなりこれこれだって呼びつけて、いくら罰を与えるといってもやりすぎ、限度を越えてる、それ……」

「わかったから」「なんでこうお喋りなのかね」

「あれっ、そういえば種田の姿が見えませんね」

「昼飯だろ」

「こんな出勤時刻(じかん)に?」「部長と一緒でしょうかね」

「かもな」

「大胆ですね、二人とも」

「勘違いするな、 事件だってことだよ」「他所で暇をつぶしてる、俺たちは部署に残る。一報が入り、どちらかの組(pair)が現場に先着する。外回り、巡回警備(patrol)が通用するんだろうさ。待ちくたびれた矢探れに成り果てていなければな」

「なんでしょうか……。昨日は瓶詰めのpudding(プリン)でその前がmille-feuille(ミルフィーユ)、そのまた前がミルクパンでその前の前が……」

「少し黙ろうか」

「へっ、はひゃ、すいません。つい、そのおなかが空きすぎてしまうとどうにもね」

「″ね″ってなんだよ。一応二年先輩、お前は後輩」

「だったら言いますけど、お前って呼び方は人権を侵害してます」

「ぐっ」

「種田に気を使ってきちんと名前を呼ぶ割に僕については、呼び捨てはまぁいいとしましょうか、お前って云う呼称によってひどくぞんざいな扱い、こう感じざるを得ません状況的に。それにですよ、上司である熊田さんに怒られてですよ、一人で留守番が暇すぎて助けてって頼むから、こうして冷房装置(cooler)が欲っする灼熱熱波の部署内で気が早いったらまだ五月の春にどこからともなく探し当てた団扇をひらりと一振り二振りならまだしも往復で腕はパンパン、筋肉張与(pump up)で要望寡少の上腕を鍛え上げられてしまう悲しい初夏を過ごしているんですよ、僕鈴木は」

「seabass(スズキ)だったよかったのにな」

「海で泳げるからって、前にもくだらない冗談は聞きました」

「そうだった、そうだった」

「二回返事をするときはたいてい面倒だって思ってるときです」

「いいから、熊田さんか種田に連絡を入れろよ」

「ふっかけたのは相田さんのほうです。謝ってください」

「いやだ」

「だめです」

「過ぎたことだ」

「だめです」

「スパッと忘れるんだ」

「しりとりしてる場合ですか!」

「だったら連絡、電話、ほれ机の上の買い換えたばかりの端末をとってみなされて、後輩殿よ」

「熊田さんたちにも文書は送られてますから。別に僕らから、ほら種田ですよ」

「先に車に行ってるぞ。運転はお前だからな」

「ったくもう。はああ。、はい、はい、うん、今から向かう。じゃあ現場で、はいよ」