コンテナガレージ

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あいまいな「大丈夫」では物足りない。はっきり「許す」がききたくて 4

 昼食(lunch)は大盛況のうちその幕を閉じた。店内は活気を通り越し血気盛、いつまで待たせるのとお客の数名が扉(door)を開け閉め牛鈴鐘(cow bell)を鳴らし。打って変わる、本分と云うべき不動、鳴きもしない。献立(menu)開発に新たな一面を加える提供(approach)、初披露にしたら成果ありと見なして良(よ)い。数回の判定を試し確定に至る。現時点は最良と認識(みな)す。

店主は夕食(dinner)の仕込みをあらかた終え、斜向かいの『コーヒースタンド』に並んだ。、順番を待つ。通行人の視線を浴びる、店の主が近隣店舗の列に並ぶことは物珍しい光景である。決め付けた己を棚に上げた、構築した現実が正義と絶対神であると疑ってやまない。いつものことだ。

 ごみ箱が飼い猫のようで迎える、環境に心を配る、現れず回る収益の一部は配慮の賜物かもしくは、 後者が勝る。手首に話しかけた前の二人が続けざま、列を離れ。突如順番が回った。

「ああ、どうも」『コーヒースタンド』の店主樽前の眉がぱっと引き上がる。売店の窓口、高さを気持ち削り幅は屋外宝くじ売り場と同等、格安で手に入れた狭さを逆手に取る。一人(いちにん)の作業台と受け渡し口、精算機(レジ)の代わり金庫を備えると居間に飾る家族写真のごとく営業許可証が出迎えた持ち帰り(takeout)専門のcoffee(コーヒー)店となる。

「珍しいですね」彼とは顔見知りである。「僕の店番を誰かに聞きつけましたね?」無言の店主はいつもの品を指差す。「いつものですね。おひとつで?」顎を引いた。

「……願ってもない訪問ですよぉ」背を向けしっかり計量器を使用する、豆を計る樽前は温度調節機能を備える望湯供給器(server)から熱湯を一度耐熱容器に注ぐ。そこへ料理用の温度計を、体温調節のそれに比べ感知する金属部分は細長く先端、差込む。豆の種類それぞれに適した湯温、砕く豆の大小(size)、抽出時間に気を配る。面倒な作業が価格そのもの。缶coffee(コーヒー)で十分だ。無論そういった意見を否定はしない。ただ、それは安さと手軽さという価格と価値を買った。高々coffee(コーヒー)されどcoffee(コーヒー)をだ、二割三割増せよう支払いは等級(grade)の高い嗜好品に手を伸ばした懐具合を射止め適した選択と、いえる。もちろん考えは一言たりと口にしない店主である。半身を捻る開きかけた口の樽前を見やった。

「『プーランジュリー』の店長さんと僕を引き合わせてくれませんか?」屋根付通路(arcade)街に店を構える麵麭(パン)屋の店主には二週に一度は登場する人気料理(menu)のハンバーガー専用のバンズを発注する間柄だ。しかし、『コーヒースタンド』の二号店でも柔焼菓(sponge cake)を『ブーランジュリー』に発注しているはず。面識は、ある。

 お客を待たせます、用意した断り文句は背後に張り付く気配の霧散とともに消滅した。通りは早朝の出勤時間を再現したみたいに人影も車の往来もなく、静まり返っていた。

 気を取り直し返答。「ご自分で頼まれてはいかがでしょう」

 樽前は眉を顰めた。鼻より下を固めた影響か、目元はよく動く。恭しく手を添えるスチロールの容器が差し出された。ほとほと困り果た、打つ手がありません。内実、真意が告げられる。

「新しいお茶請け(sidemenu)に妙案をお知恵をひとつ、お貸しください。『PL』の『ある』『ない』、これに対抗するにはお二人の力が頼りなんです」随分と畏まる、小川といい若い年代の流行りなのかも。

すんなり樽前の提案を店主は聞き入れた。「私よりも第一は『ブーランジュリー』の店長さんに問い合わせ、それから僕へが手っ取り早い。明日の時奉失現(idle time)か、閉店後、そちらの都合が合うならあるいは、早朝でも時間を作れますので」 

 店の固定電話が鳴るだろう。数少ない店の連絡先を知る二人だ。煽りを食ったと割切れる麵麭(パン)屋の主人は「妥当だ」、と億劫がらず足繁く通われてしまうよりもと素直に足を運ぶはず。ちなみに『ブーランジュリー』と『エザキマニン』はほとんど振興店の余波は受け流す。墨流しは墨汁が移る前に紙を流出(ながれで)る。勘定に入れていない、ということ。

 店に戻った。coffee(コーヒー)と共に煙草を頂く。休憩を終えた国見から贈物(present)を貰った。長尺対面台(counter)に十個一包(one carton)が置かれる。賭け事(gamble)で一山当たらしい、情報収集だそうだ。特に公的機関の意地汚い実態を罵った彼女を覚えてる、忘れ物の賭け事(gamble)攻略雑誌に出会ったときである。

 新料理品(menu)。スチロールの容器(cup)の上蓋を取り外す。芳香(かお)り。coffee(コーヒー)に合う……。過去を上回った驚きとかけ離れた、まったくの別物、予想外、纏(まとい)は真新しさ、これが土台を担う。

camera(してん)を取替え適合を潔く破棄、一致を念頭に掲げるという解法(approach)は目新しい、店主はそれとなく方角を算定した、協議に臨み内容物をまとめよう。

 さらし首、という言葉が十個一包(carton)の最上部、飛出す一箱を頭部に置き換える。

 顔が人を表す。生きた証の過去を他人が指しあるいは泣き崩れ当人である証明を全身をもって現す。首と立て札が一揃い(set)だった、何処(どこ)其処(そこ)の何某(なにがし)が左記の理由により斬首刑に処せられた。つまり、見せしめと訓告だ。抑止とも言える。

 事件のことは刑事に任せるさ、店主は推測を切り上げ仕事に戻った。小川が多量に膨らむ紙袋と帰還(もど)る。前が見えていない。牛鈴鐘(cow bell)は扉(door)が閉まる数秒前に店主の脳内で別の音色を奏でた。なるほど……。きっぱり事件と縁を切れた。煙草は要らない、小川に前もって伝えた。どうしてわかったのですか、と荷物から顔を出し詳細を尋ねた彼女であるが、店主の考察は速やかに明日の昼食(lunch)にcoffee(コーヒー)と相性の良いお茶請け(menu)をひたすらに探った。

 pizza(ピザ)釜の温度調整は館山が奪い取るよう代わりを願い出て、火鋏と銀色(silver )の耐火用手袋は引き渡した。片手間に作業を、店主は入店を時に拘束を思った。