コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

 夜かいの翌週。賑やかな通り、『ブーランジュリー』供給の『コーヒースタンド』が提供(おく)る例のミルクフランは長蛇の列へ次から次、人を吸い寄せる。入店を前に三人に一人が『エザキマニン』より筋向こうへ心変わり、待ち時間の長さが仇と出る。通りは整然と一方通行の車道がきちりと開き、南下(くだ)る駅前通りより、ぱくりS川通りを抜く。午後、昼下がりに鈴木が顔を見せた。担当を外れてなお、譲りがたきは真相である。関係者より、総意を得る小市民は暮しに溶け入り、犯人越しの彼らの目は尻尾を、探す。息をのむ、踏み違えて後の祭り、違法な調べを指摘されかねない。不安が襲い、苛(さいな)まれた。資料の受け取り、に来たのです。雑誌に混ぜ再利用の回収に出してしまう、彼は閉店あとの流れを聞きすぐさま一報を入れた、資料は取りに伺います、当初の話と違いますけどそちらにお任せした処分は忘れていだだき、どうか人目は避けた所に裸は、止して保管しててください、と切羽詰る嘆願であった。

 『クロス』へ及ぶ捜査は、殺した気配をすっかり。誤見。着手すら行われていないらしい。日本久世は生きてあの世の者を高山博美に、高山明弘は自由と引き換えに晦ます、余分な子いずれかが不在、どれも憶測でありこれは独り言と、聞き耳に言うがごとく。振舞う、目的はこれである。鈴木は列に並ぶ証、戦利品を長尺対面台(counter)に着きいそいそ食べ初めるや、数える間を与えず頬袋がみるみる膨らませた。立ち食いは刑事としてあるまじき模範を逸脱する行為、なのだそう。鈴木の持論らしい。向かう監視の目を拾いましたので。裏口を彼は、出た。扉(door)を閉める間際そう言った。それから、被害者の娘に捜索願いが出された、と指を立てた小声。生きた姿は刑事が触れた一人きりに記憶の者ら、それぞれ、またはそれらである。蒸し暑いtall building(ビル)の重たい日陰を、たった、小走りに遠ざかる姿へしばらく浸る、tall building(ビル)に挟まれた裏口の恩恵、舞い込む風を身に浴びた。

 それからもう一名、店を訪ねた者がいた。雨合羽(rain coat)の女性である。店内は僕を見つけるなり低頭、平謝り。お酒を多量に含んだ末起こした醜態であったらしい、提止多飯(idle time)に仕事を抜け出しなおかつ店主独りの瞬間を見つけるのにここまで謝罪が伸びてしまったと赤裸々、彼女は訴え、僕は過ぎたことであって対する様に変わりようはない、お客なりの振る舞いに引き戻るのであれば、何一つ問題がないのでは、こう告げ。救われた、彼女は神の思し召しとばかりに発言をなんどとなく確かめた。

 種田は明りの灯る夕食時(dinner time)の只中に、お客として顔を見せた。非番であるらしい。頼みもしない料理を心遣い(service)で運ぶことは止めて欲しい、彼女らしい宣言である。stewed beef(ビーフシチュー)を数分で平らげたらしい、それを裏付るよう妙にお客の回転がこの日は早く、誰もが食事を手早く済ませて本流に戻ろう、躍起になっていた。公演は、どうやら終幕を迎えたらしい。帰り際、厨房の僕に彼女の声がよく通おる。概ね、物語はその幕を閉じた。脅威が去ったという認識に立つならあなたの言い分に勝る見識を他端(ほか)に得る、到底思えない。打切りを余儀なくされた、不確定な対象に、限りのある予算を割当るに権限に独往、信頼にも欠ける。あなたが云われる未来を甘んじて受入れた、不愉快極まりない、己の力量に嘆く私自身に向けた発言です。歯がゆさを痛切に味わった、貴ぶ体験であったと感情を終(しめ)た。

 配膳台を介さず、受け渡し、釜を出たpizza(ピザ)が直に客間(hall)・客席へ運ばれる忙しさに、いつだか通路と厨房の段を、刑事は後にしていた。

 先日、取り替えた食器を補う代替品が店に届いた。一国が名宛人はひどく珍しい、封書は国の印章。礼状を添えて、贈る航空便は刻印こそ違え店のために作らせた品である。性格を鑑み直に関係者を向かわせては、礼状に宛がう端末を頼り、小川が訳した。落札者は王室に遣える人物とのことで、各国の競売(auction)に欠かさず顔を出す、日本で出物に出会い本国へ持帰る。一揃えがまとめて見つかる事例は稀にみる珍事だそう、長く日常に使われた、これが大いに女王の胸へ響いた。印字と代筆を詫びてもいた、加齢による筆圧の低い文字は読むに値せず。一国の長というより顔の知らない相手へ送る異国で暮らす老婆がそこには滲む。住所は仲介業者に私どもが尋ね、無理に聞き出した、個人を侵害してまで果したく押し付けた品物だけに、そちらの思うまま、行いを開示にしてもなんら支障はきたさず、と。圧力は人によりけり、感じる者もいる。業者には連絡を入れた。仲介料の返却をせめてもの償いに、それとこちらは懇願、業界への流布だけは思いとどまれれば、図々しい、身に浸みますけれども。釘を刺して係りを断つ。所有が知れた暁には王室へ送り返す、あなたが他言したためである。食器は上に、先人たちと眠りにつく。六本1揃え、厚意と受取る小川へ国見が正した。

 終業(close)に返る看板を。従業員に続き店主は戸締りを確認、handle(ドアノブ)を決めた数だけ引いた。、書類入れを携える。膨らむ曲面が水を弾き、従業員達(かのじょたち)からの気まぐれ(present)である。店主は傘を差さない。そのため抱える雑誌は天候により、濡れる。傘を贈るならそれはそれで使用を躊躇うさ。けど、忘れ物の束は判読できた方が良いに決まってる。 断る理由はなかった。これがもし誕生日やその他記念日に贈られたときははっきり返却の意をきっぱり貫いただろう。月、誕生月。刻印は週にあらず、月年にあり、か。倍数が揃う数に組を減らした、鍵を開けた中を獲れはしたくて開けさせ運ぶ。四を嫌い、死を判わかる、ここにも気づきだった。呼ばれて顔のあがる。続いた。そう、七の後に八より十二が。牡羊、牡牛、双子、蟹、獅子、乙女、天秤、蠍、射手、山羊、水瓶、魚。太陽は八の月、獅子座を指し、月は七の月、蟹座を指す。剣は牽牛、四月。瞳は知性の乙女座で九月。鉄鎚は秘する蠍の十一。鷹羽根は翼を持つ射手座の十二。桜桃(さくらんぼ)は双子の五月。あるいは幸運にかけた七であるのか、ジンクスとはあちらの慣わし。思えば実(まこと)。

 地下鉄は改札口で解散、小川と館山(ふたり)と別の路線に通(の)る。国見蘭は方角が一緒だが、二つ離なす別車両の乗り口にわざわざ立つ。仕事は終わった、私生活までも共有するべきか、彼女は忠実である。rubber tire(ゴムベルト)、開閉に明り。傾れる手前と乗る、箱。

 着席。席が空いていた、目を覚まして目の前の乗客が駆け降りたのだ。資料を取り出す。 

『月刊MAKING』七月号 

 ・特集∧初夏にめぐる穴場cafe∨必見、見過ごした逸材はここにもあった。

 ★初 取材NGの名店○○○がついに本誌のインタビューに応えた!あの名物メニューの全容が明らかに!?

 ・[氷菓=夏氷] 今夏、新旧・名珍・定奇が各種揃い踏み、あなた好みの一店をリサーチ。

 ・夏祭り――『出店』といえば?S市中心部AND郊外を比較せよ。

  

 最終頁は上部三分の二 下部三分の一に次号の知らせ。

 ∧みるくふらん∨

 調理過程指南

 壱・小麦粉、塩、水、牛乳、イースト菌を混ぜ、よく捏ねる。(水と牛乳の割合いは極秘。生き物と思え、生地の絶妙な張りは調理時の環境により変化するものと構え望むべし)

 弐・生地を十分に寝かせ、発酵を促す。状態を見計らいガスを抜く。 

 参・再度寝かせ発酵。(もち肌を求めるなら二時間欠、発酵を狭めよ)

 四・薄く伸ばし、生地は四角く折りたたむ。細長くこれを裁断す。棒状に形を整えて。

 伍・オーブンで加熱。ころあいを見計らい、取り出す時間を適宜に探る。

 六・焼きあがる麵麭に縦へ、切れ込みを入れる。クリームをなかに充填し、冷蔵庫で保管、提供まで温度を下げる。

 クリームの材料――練乳、バター、砂糖

 左、裏表紙。

「美味(おいし)そう」隣の女性が呟いた。途端、膝頭に戻る目線。規定を超える紙面は理性のネジをそっと緩め隙き魔から凝視を引込む。店主は裏表紙に見入る。

 公開へ踏み切った、気がついて欲しいとの願いらしい。あるいはせめてもの償いか、知れない。視裸(みら)れる、相手に届きさえすれば、。傲慢は他人事に成り下ったのだよ。 背表紙に車内灯が写りこみ、置いた手とが視界に収まる。像と結ぶ対象はずっと向下(むこ)う、基底の外。いない、空間が浮かぶだけだ。 縛られ、我慢がしばらくは心地よく、あれよ永(とこし)へに根のあげ 解放、と選ぶ。ところが、すぐにまた率然と紐に絡まる。所属とは深く考えぬ一時を許してくれる。強制と、引き換えに。

 明日は何を作ろう。雑誌はもう閉じてしまった。、とっくに視線は解放(ときはな)てた。地下鉄を、降りた。追い抜かれるため遅遅とした歩みを心がける、駅員に見送られさいごに改札機を通過した。toilet(トイレ)前stainless steel(ステンレス)製のごみ箱へ上蓋を外して腕輪、塊り、片側裂け目より束ねた厚紙を投げ捨てた。追加は不適切である、量に違わぬ胃袋はぱんと脹れるのだ。なにを食べる。相手を計った、規則を抜きに。外は風が出ていた。近くて遠い、海鳴りみたく風たちがいたる処で奏でる。見つけてみなさい、言わんばかりだ。安息(oasis)、涼を与えたか。いずれまた戻るその時までに。店主はずらした焦点そのままに、考察を切った。