コンテナガレージ

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※1 ~小説は大人の読み物です~

「作為が感じられた、皆さんの言葉ではハメられた、とでも言うのですか、自身の身に降りかかった事態だ、と正面から受け止めた後、私は対応策の捻出に思考をあっさり切り替えたられた。はい、記者の方が、おっしゃるように探せば敵は見つかったかもわかりません。が、それは、怪しさをもんもんと湛える。行き止まりの迷路の、残った最後のまだ試していない道に思えてならなかった……そう、誘導です。いいえ、探索をあきらめる行為に続き、私が次に取るべき行動にまでその予測を立てていたのでしょう。足りない頭も寄せ集めてしまえたのですから、それなりの練られた作戦が立つ。何しろ、私には敵が多いらしいのです、自分ではまったく感じていません。マネジャーの見解です。危害を加える、ええ直接的な行為を前提に、私がもしそちら側、襲撃側の人間であるならば、自身の存在をわかってもらうべく長期的な傷を負わせようと仕掛けを施すでしょう。的確に息をついた隙を狙いますね、はい、あなたが言われるように、演奏がものの見事に機材トラブルに見舞われたら、お客の私に対する想像はもろくも崩れ去る。よって、選択をえり好みする余裕のない行動に駆り立て、このような機内における特異な空中ライブの開催に至った、というわけです。それでは演奏について多少触れておきましょうか、無計画にことを進めた無謀な演出とは一線を画す、大まかなに想定に上げていた、ということは公言するべきですね。表情を窺う限り誤認される方が多いようなので、変更の手間を省いて差し上げた、とも受け止めてください。さて、飛行機内部、機内の気圧は地上よりも当然低い、音の聞こえ方に関しては少々実験的な、探り探りの演奏に挑む。ただ、お客さんにとっては貴重な今後も続くかもしれない奇抜な公演としては好適に捉えるでしょう。まだアンケート用紙、はい、演奏後にいつも感想を書いてもらうのですが、目を通していませんので、どちらの評価に転んでいるかの判断はつきかねます。それは無理ですね、回答は拒否します。はっきり申し上げますと、ライブはその場限りの失われる保存のきかない演奏が足を運ばせる要因なのですよ。分かりませんか、搭乗されていないあなたにお話をしてしまったらば、内容をひそかにかみ締めるお客さんの効用は半減をしてしまう。限られた人物が有する価値であるからこそ、チケット代と渡航費、五泊の宿泊費の大出費に踏み切ったのです。本来、私は反対でした。限られた娯楽費用の中で私への費用の捻出をお願いしている。抱えきれないほどの商品が欲しいからといって月に何度も曲以外の関連商品をお客に押し付け、ファンだからという圧力をかけて購買に走らせることは、長期的な関係性を想定したらば、あってはならない所業です。おっしゃるとおり、今回は高額な費用にならざる得ませんでした。ですので、費用の大半つまり、往復の飛行機代と宿泊費の支払いが困難である方については私が代金を支払いました。三列目の、女性の方、あなたです。写真や場面の描写も控える、と事前に約束を交わしたので、あなたはその場に席を獲得するのです。カワニさん、回収を。一口、お水をいだきます。皆さんも、どうか気楽に。カメラもありませんし、進行役はわたしが兼任しますから、どうぞ咳払いも花粉症のくしゃみも堂々となさってください。途中退席もかまいません、ただ中に入る際は後ろのドアを通ってください。また、椅子の確保は認めておりませんので、ご了承ください。それでは、次に、機内を場所に選んだ経緯を話しましょう」