コンテナガレージ

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3 ~小説は大人の読み物です~

 

「是が非でも一滴たりとも情報の公開は避けます、とまでは言い切ってはいない、どうか会見のはじめに戻って、そのおぼろげな記憶を改めてください。ギターと生の歌声を、搭乗のどの時間帯に演奏をするのか、という協議もレコーディングスタジオで行いました。機内の演奏は非常に実験的に進められた。はい、外に出歩く労力を惜しんだのです。時間は有期。こうして皆さんに足を運んでいただいたのも、改めて会見場に赴く手間を省いた。ええ、私の非を認めます、余計でした。……機内における演奏は二回に分けた、前方のビジネス席と後方のエコノミー席とに。演奏の曲目も実は変えています。こちらの落ち度とはいえたまたまライブ観戦の場を奪われそうなった方々に、一方はツアーの発足に貢献をしたのは私たちの要請に応じたエコノミー席の観客、両者の差異は必然である。セットリストの内容はやはり控えます、珍しい曲目も演奏した、ということだけは伝えておきます。このあたりでやっと皆さんの目の色が変わりましたね、これは行きの便、つい一週間前の搭乗機で引き起こった出来事についてを特に知りたがる。会見を、前代未聞の奇抜な発想を体現した機内ライブの模様を正しく伝えるための一部に位置づける、このことによって本来の目的、目当ての機内ライブを紙面に掲載する権利を得られた、とあなた方の思惑、魂胆を私は受け止めます。そして当然ながら、捜査の只中に当事者である私が事件の内容を世間に公表するなどとは非常識極まる、警察の態度はもっともです。報道規制、というのでしょうか、警察は一時的に規制かけました。ただし、媒体を限った。新聞や週刊誌、速報性の高い紙面、雑誌に関しての規制に思えます。もちろん、その他の媒体にも規制はかかるとは予測されますけれど、記事の指し止め、あるいは一部修正を求める働きかけは事件の解明を以って解除されるでしょう。事件という言葉を使いましたが、鵜呑みにはしないように。未だ事故・事件の判断はつきかねますので。これは搭乗者として感想です。本筋に戻ります。アメリカ往復に二機の機体を私たちはチャーターをした。不況といわれる時世に社員旅行に向かうはず一行は五日間の滞在予定を組む、ホテルは五日とも同じホテルに宿泊の予定でありました。したがって、ホテルの客室も空きが生じます。ホテルの宿泊代を私は当初一日のみの負担と決めていた。目的はなにより私の演奏、そのほかの娯楽は個人が負担してしかるべき、と考え、現在でも各自に課す負担は妥当であり、普遍だと自負しています。ただし、私の見解は世間とずれが生じているらしいので、その点はマネージャーと協議を重ねた。結果、五泊分の宿泊費、その全額を私たちが支払いました。これは宿泊地が同じ場所、という関連が強く働いた。機内のトラブルに繋がる用件ですから。ええ、これでも噛み砕いて話している。人前でしゃべることはまったく慣れません。たまに見かける大衆に向けた街頭の訴えを例にとると、何を話しているのか理解に苦しむ。なぜなら、多くの演説は過去に取得したはず発言内容を、あたかも一から構築した概念であるかのように伝え、声高に訴える。現在の心境を語る人物はわずかです、話していたとしても聞き耳を立てるような内容ではありません、まあ、だからこその挨拶、なのかもしれない……。したがって、私には不向き、と言わざるを得ないでしょう。ええ、この一見無益とも思える解説は必然的に降りかかる火の粉を巨大な団扇を脇に挟んで素手でうち煽ぐ。道路上の危機回避に不自由な移動手段の電車を選ぶ、とも言える。必然ではありません。窮屈です、息苦しく夏は暑く、互いの匂いも気になる、にもかかわらず、ということです」