コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

4 ~小説は大人の読み物~

「そういうことですか」
「どういうことです。違います、訂正してください」
「若いなぁ」
「あなたよりは」
 膨らみきった風船は押さえていた指先の意志があきらめる、空気の挿入口が解き放たれてる。山本西條は言う。
「手首はじん帯の損傷が疑われてました、幸い手術は軽度な手技で応対できたらしいです。専門用語を並べられてもねえ、とにかく指は正常に動くそうで、完治は約二ヶ月と猶予が数週、これで治るんだそう。ああ、痛めた原因?あっち、ニューヨークの古い楽器店で気に入ったギターを弾いてたら、ぴきっと電流が走って。寒さと疲れだそうよ」
 山本の打ち明け話に耳を傾ける熊田が、顎に手を当てそのまま動きを止めてしまった。彼が何かに気がついたときにいつも発動する静止した状態である。
 犯人が山本西條だというのだろうか、種田が考察に入りかけた間際、背後のドアがスライドした。
「あっと、間違えたかな、ここは佐藤さんの病室じゃあ……。あっ、もしかして山本西條さんですか、あのですね」
 種田は痩せ型の男性、その手首を捕まえ、背中にねじり上げた。よどみのない動作、肩にかけた彼の鞄がずれ落ちる。
「あーったたたた、待った!待ってください!病室、間違えただけで、ひどいですよう」
 種田は右手で手帳を取り出す。閉まったドアに横顔つける訪問者に見せ付けた。
「これは刑事さんでしたか。いやあ、なんででしょうかね、階数を間違えたかな」
「面会は禁じられている。どうやって入った」種田が厳しく問いただした。いつも以上に力が入る、どうしてか、知ったことか。
「外に誰もいなかったから、面会は解除になったと思ったんですよう。ほんとです」
 男を廊下に放り出す。警備要員の姿が見えない、トイレだろうか。
「いけ」
 見送る廊下に熊田が出てきた。
「聴取は?」
「次だ」鈴木、相田も病室を出る。名残惜しそうに君村ありさの詳細を鈴木は求めたものの、力で勝る相田によってしがみついたスライドドアと別れを告げた。
 エレベーターに向かう。熊田はいつになく神妙だった、私も今日こそは、種田は人一倍神経を尖らせた。上回ってみせる、推理を先に展開するのだ。
「種田」熊田が言う。低い声。「君村ありさの所在を調べてくれ」
 考えたかったが、駐車場に停めた車へ乗り込むわずな時間内のなかで調べることはタイムロスの軽減が予想される、仕方がない。先輩二人は遊んでる、しかも頼まれたのだ、私はじきじきに。久しぶりに端末を触る。アップデートの要求が届いていた。なんて不合理な機能だ。一点を望む潔い思考に振り切れないとは、いくつかは変えきれずに零してしまうだろうに。
 エレベーターが昇ってきた、下りてくれることを祈る。
「もしもし、君村ありささんは現在どちらにいらっしゃいますか。はい、種田といいます。……警視庁の種田です」