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追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 7

「なぜ身分を隠して出演されたのでしょうか」濡れた路面を歩く、細い路地、すれ違う歩行者はこのあたりの住人には見えない。ラジオの出演中に雨は降って上がったようで、レンタカーのワイパーは発信時に視界を確保した数回の往復以後、活躍の機会は訪れていなかった。アスファルトがにおい立つ。
「刑事、とは名乗れない」熊田はすぐに付け加えた。「それを踏まえたうえでの質問か、うーんどうだろうな、相手を油断させたかったのかもしれないな」
「あいまいです」
「自分のことは把握していないつもりだ」
 そば屋、カフェ、洋食屋、定食屋、レストラン、ハンバーガーにホットドック、サンドイッチ、おにぎり屋。半径三百メートルほどをめぐった。君村ありさは、見つからなかった。
 あきらめた二人は鈴木たちが控えるビルに引き返す。小さな公園を突っ切り、近道をした。公園、というものの定義を種田は考える。事件とはまったく無関係だが、妙に気にかかった。熊田の行動はどこかに意味があるのではないのか、連れ出したことで私に解決に導く手順を教えようとしてるのでは、彼女は熊田の半歩後ろを歩く。
 ブランコの柵の前で種田は立ち止まった。視点がぐるりと公園の私を中心に回る。
 ビルに囲まれる以前にこの場所に存在を許された。
 死体はいつから荷物棚にあった?
 ブランコが揺れる、昼休みに出た仕事人がサンドイッチにかぶりつく。
 死体はこれまでの居場所を空けた、そこでは役目もあった地位もあったかもしれない。
 車両侵入止めの奥の歩道に立ち止まる、私を待つ熊田をしばらく待たせたようだった。
 ロビー。
 ソファに仲良く頭を傾けたバランスを摂る鈴木と相田は眠り誘われてる、君村ありさの所在を確かめに三階へが上がった。当人は戻ってきた直後であった、上着を脱ぐ姿が目に入る。
「仕事に取り掛かるので」、とあっさりしかもしっかり断られた、こちらとしては従うほかない。
 彼女が種田たちに姿を見せたのは、それから二時間後のことだった。