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追い詰める証拠がもたらす確証の低下と真犯人の浮上 9

「では、チケットの入手方法を教えてください」やんわりと熊田は次の質問を述べた。なるほど、と種田は感心する。本題を二つ目に、重要そうでありつつ実は程度の低い質問を一つ目にぶつけた。相手が油断した隙をしかも相手が作り出してくれる。懐に用意に入れるわけである。
 くくっと、君村ありさは喉を鳴らした。そして、高らかにはきはきと笑い声を上げた。罠に気がつける、浅はかな自分を笑ったのか、それともわざと罠にはまったのだ、というこちらへをまさにあざ笑ったのか、種田は言葉を待った。
「敵対視ですもん、相手のホームページに張り付いてるのはおかしい。そういうことよね?」
「はい」
「まったく抜け目がない。ああ、だから刑事なのか。それって刑事を始めて身につけたのですか?ふふっ」わざとらしい嘲笑である。「おかしくは残念ながらないのよね。実は、夫がこっそり予約してたのですよ」
「あなたの旦那さんが?」
「ええ。私の手前、言い出せなかったんでしょう。出張に行くとは出発の二日前ぐらいかな、聞かされていて、海外だってことも私には内緒にしていた。出張自体、月に一度や二度、家を空けることはいつものことです、特別不審には感じなかった、私がチケットを見つけるまでわね」
「キャンセルせず、代わりにあなたが搭乗をした。それは不可能です」熊田が言う。
「あら、どうして?」
「チケットの購入に際したパスポートの記録と符合してなければ、搭乗は許可されません」
「不勉強ね。いいわ、教えてあげる。家族同士なら搭乗者の変更を受け付けるのよ」
「種田」熊田は発言の真偽を確かめろ、こちらの要求をした。種田も見落としていた箇所である、変更の契約に関してはチケットの購入手続きの項目のみを言われてみると浚っていたか。
「もしもし」
「はい、プリテンスです」
「カワニさんをお願いします」
「カワニですか、失礼ですがそちら様は?」
「警視庁の種田と申します」
「少々お待ちください」
「……はい、お待たせしました、カワニですが、警察の方ですか?」
「先日開いたライブについて二三質問があります」
「ええっと、随分とまた今日は急ですね」
「チケットは家族間での搭乗者の変更が可能でありましたか?」
「チケットですか、わっと、どうしたかね。登録の変更は基本的に認めていなかったようにも、ちょっとお待ちを」待ち受けの音楽が流れる、二周目の中盤で切れた。「もしもし、刑事さんのおっしゃるとおりでした。家族間それも成人した夫婦に関してのみチケットの名義変更が可能と明記されています。いやあ、よく僕らも忘れていた取り決めを気づくとは、さすがに刑事さんだけのことはある、ぼくは一目を置いていたんで……」種田は遮った。
「用件は以上です、お手数をおかけしました。ご協力感謝します、では」