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犯人特定の均衡条件、タイプA・タイプB 2 ~ミステリー小説~

「発言をしてしまう予定であったならば、事前に山本西條からmiyakoに死体の事実を教えることは必要だったのでしょうか。可能性としては彼女が発言に至る、喫煙の秘密をmiyakoが握ってから遅れた開演までのこの間に該当者に向けた働きかけ、アクションが起きた、と考えられます」
「乗客を疑うのか?」相田が肩肘をテーブルに載せて、顔を前に出す。額には二本の皺。
「私たちの捜査は歌手三名及びフロアに出入りできた六名に重点をおきます。そのほかを対象にすることで状況は改善するかもわかりません」
「決まりです。いきましょうよ」鈴木はゼリーを食す。やせの大食い、相田曰く昔の自分を見ているようで、年齢とともにしっかり暴食のツケは回ってくるらしい。
 食事をいち早く済ませる熊田は手元の時計を見る。食堂の入れ替わりはいつの間にかやんで、今度はゆったり食事を取る宿泊客で早朝から笑い声がところどころで飛び出す。
「各地に散らばる乗客全員をあたるいい加減な方針ではないことを祈ろう」
「見くびられましたね、僕も。いるじゃないですか、一人だけ怪しい人が。ヒントです、人っていうよりも職業でバシッと当たりますよ」
「保安員の警官か?あの便は乗っていないぞ」
「ノンノン」
「わかった、医者だ。死体が見つかった事実から目をそむけるのはおかしい。大まかな死因の特定を拒否していた」
「かっちかちですね、相田さん」
 形勢が逆転、相田はクイズに取り組む姿勢をとる、記憶を搾り出してる。
「鈴木、時間がないんだ」熊田が嗜めた。
「種田はわかってるもんね。顔に書いてある」
「何だ、種田いってくれ」と、相田。
「……十和田、という男。職業は探偵」
「十和田って、十和田って、あの年代物のビルに事務所を構えた奴か?」
「探偵という特殊な職業に、十和田というめずらしい苗字。相田さんが思う人物はその人物しかいないでしょう。はああっ、北海道に戻らなくちゃなりませんね、そうなる。すっかり舞い上がった僕の情けないこと。せっかくの都会暮らしが……はぁ。がっくり」
「連絡を入れます」前回の事件で十和田の事務所を訪問していた、名刺に印字された番号を種田は探索、端末を取り出して耳に、彼を呼び出す。夜型の生活習慣でないことを祈った。