ガラス張りの喫煙室越しに、薄く曇るシャンデリアを眺めた。
何かのために殺されたのだと仮定すると、掘り起こしてはならないのかもしれない……。
三本目。
これを摘みかけると、人が飛び込んできた。厄介な場所への誘い。
壇上で、挨拶をした。手短に済ませます。前の人物大層長かったので、と笑いに変えて本心を語った。
内容がスピーチの傍からこぼれる。握手を交わしたことはなんとなく右手が記憶していた。
わき目も振らずホテル前のバスに乗り込んだ。手元には硬質で透明な四角柱。
異なった速度の風景を欲しがった。
カワニはとうとう姿を見せなかった、私に合わす顔がなかった、ということだろう。
駅前で下りた。
スタジオに着替えを用意しておいて良かった。後でアキに取りに来てもらう、明日でも構わない。記念品をコーヒーメーカーの横に人形を並べるみたいに置く。
いっそのことビルごと買い取ってしまえ、私が囁く。年間契約で十分、それはどこかで誰かと何かと、わずかなかかわりを求めているのかも。そう、死を呼び寄せるルートを。
テーブルの饅頭をつかむ。名刺が一枚その下に置かれていた。次の仕事がスケージュールの隙間を埋る予感、いや確信の旗がはためき横切る。
ギターをつかむ。そういえば、と着飾った演奏の衣装は実際パフォーマンスを下げているのでは。
こちらは、岸壁で手旗を振る。
検証の余地がありそうだ。
買取りの連絡をアキに入れた。しわくちゃ、汚れの恐れと縁を切り、曲作りを取り掛かる。夕食は饅頭が補う。究極にエネルギーが低下したら、仕事を切り上げよう。補給と休息と稼動はそれぞれ個性が強い、素直に彼らに従う、これが付き合い。
仁王立ちのアイラはストラップを肩に曲を紡いだ。行きつ戻りつ、鉛筆とお尻の消しゴムがささっと、ずむずむ、ギターはしゃんしゃしゃん、と声は言葉にラ行を繰り返す。
曲が完成し、彼女が死んだ。
こうして可能性を探る。
死によっては、新境地を探っていたのかも。
亡くなったので声が聞けない、これが残念だ。
ケースに仕舞うギターを担いでスタジオから駅へ。真っ暗である、とっぷり日が暮れた。お腹がすいた。家に何かあっただろうか、わかりきったこと冷蔵庫の中身は透明な液体のみ。簡単に済ませられる食べ物を駅構内で願ったけれど、もう店はシャッターを下ろす。だったらと、空腹を我慢した。おかしなほど車両は空いていた、なるほど今日は祝日らしい、車内の電光掲示板は日付に親切な「祝」の文字を流す。
曲は明日破棄しよう、あいまいな死を私は飼うのだ。