コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 4~無料で読める投稿小説~

 待ち焦がれた顔で出迎えを受けた、しばらくさきほどを離れた、簡易な食事を食べた、遠慮なく差し入れを摘んだ、驚かれた、昼食を抜いた事実を告げた、もっともだ、ありえない、たまにある、朝食は食べる、ジュースは飲んでるかも、差し入れも、甘いものそうだ、だが一人だとどうだ、深夜とか閃いた時とか、多様性に富む意見はどれも彼女とそれと合致には至らず。
「逮捕されたmiyakoさんが犯人に違いはないんでしょうけど。……機内の死体のことも説明したのですかね。いえ、事件ついて話してたのです。はい、ええっと、いやどうでしょうか、それは難しいとは思いますよ、はい、無理にでも、はあ、知りませんよ、機嫌を損ねないようお願いします」カワニはこちらに許可を求めた、端末を片方の手で覆う。
「刑事さんです、事件についてアイラさんに聞きたいことがあると……、どう、します?」
 女性の声がコーラスに欲しく、彼女が呼ばれた。数分の音入れ作業、二度目で退出の許可をもらった。事務的な手続きはカワニを通じて、と早々と上階を去って自室のように使うスタジオに引き戻り、問いかけを受けた。まずはコーヒーを追加、栄養補給のクッキー一枚奪取、作業机に腰をすえて漫然とPC画面を眺め、それからアイラ・クズミは答えた。「勝手に耳に入る程度ならば、許可します。返答は約束できかねます」
「だ、そうですが。ええっとでは五分で、はい」カワニはいう。「スピーカーに切り替えましたよう」
「歌手のmiyakoは先日、自ら罪を認めた。機内における死体の出現への関与は認める一方で、殺害、搬入等々の詳しい手順は頑なに説明を拒む。捜査を外れた身分です、私たちは部外者である、たわいもない独り言と受け取りつつ、投げかけた内容を聞き役のオウムが性質を破って言葉を返す、もてあます暇を埋める気分に駆られることを祈るばかり。決して強制ではない、そのことはあなた方への連絡は私の端末をそちらのマネージャーが拾い上げてくれたことに端を発します」
 野外ライブの会場、それもカワニの視界、気を引いた場面を狙い打つ。瞬間的に判断を下した、どれも却下。偶然カワニが女性刑事の端末を拾い上げた、とアイラは思う。その場に居合わせた彼女の行動理由は狙いをつけた対象者の見張りだったのだろう。
 女性刑事の種田は続けた。「miyakoに手を貸した人物たちが機内にはいたかどうか。そのことについて意見を」
 思考の半分を作曲にもう半分を事件に器用に割り振る、アイラは言った。「一方的に言葉を飲み込む。反論に打って出るオウムは存在をしない、そのことを認めてから話します」言葉はすぐに返る。
「認めます」
「従順」、とカワニが口を滑らせた。高感度のスピーカー、音は相手に届いただろう。アイラはギターのストラップに手をかけて、ギターを引き寄せる。椅子が軽くしきしむ。
「はじめに言及しておくと、miyakoさん、という方は犯人ではない、と私は捉えます」間を空けて反論を待った。よく堪えている、アイラは続きを話す。「見当をつけた、あなた方の自由でしょう。私の予想ではあなた方警察の方針は呼び水、という罠を仕掛けることで辛うじて犯人の捕獲に成功した。機内の不可解な死体、この一点の材料では不十分であった。実際にその現場に居合わせた私、そして最後まで自分たちが搭乗していた事実を隠したがり、それを聴取まで突き通す態度は矛盾を感じるばかり。刑事として、その背後の警察の権威が揺らぐのでしょうから、ええ、仕方ありません。組織とはその程度の、外乱に常に晒される」アイラはPCから木目が目立つ壁へ焦点を移し変える、目の保養。「機体に登場する保安員はツアーを企画する段階において議論には上がらなかった。知られては、本来の役割を果たしません、私たちが犯行に及ぶ可能性もあるのです。すると、誰かが保安員の搭乗を知っていたことになる。機長か、副操縦士、客室乗務員、犯人なのか。チケットの販売数に増減はあったでしょうか、カワニさん」アイラは尋ねた。