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論理的大前提の提案と解釈は無言と一対、これすなわち参加権なり 5~無料で読める投稿小説~

カワニの動きが見事に止まる。アイラの視界は物体が止まる。
「日常的に顔を合わせる者同士は互いの変化によく気がつくようで、実に多用な変化を見逃す。女性の容姿を男性は気に留めない、ありきたりな男女間の日常ですね。被害者はこれを応用したのだと、私は考えます。経年劣化は平等な時の流れに即す、髪を切ろうが肌の調子を整えようが、細胞の死滅はついて回る。個人差はあれど互いに人は歳を取るのです。緩やかな老化には過剰な反応を示さない、示せないことが言えるでしょう。共に暮らしている、という仮定です。一方、離れて暮らす知人の曖昧な薄れる顔を携えた再会は変容を不一致、と認識。時間に伴う"慣れ"の助けを借りるその時までやはり時間、経年劣化の支配に遭う。逃げる術は考える分、時間の無駄で思いつきは愚策に限られる。抗う人物は多勢、だが現実的に見ても冷凍された躯体が潤沢な資金と研究の場としての利用をひた隠すそれらに取り組む研究者たちの保護下において願望が成就するか、と問えば、やはりそれも時間に生きる私たちの価値基準とは相容れない。すなわち、私たちは時間という抗いようのない生まれつきの性質をその身に宿し、老化を目指す。親類を見て、兄弟を眺めて、他人を年上を見上げて、あなたの次の瞬間をそこへ見出す。過去を見、子供に自らを思い浮かべることは稀な現象だ、土地や状況、似通った外形がもたらす連想が主な要因。酸化がもたらすこうたい(後退・交替)が顕著な人物を先に目視、続けて若かりし頃の当人を想像に挙げると私たちは両者を他人と思いたがる」半身、アイラはカップをそっと持ち上げた。「被害者の顔写真と待機していたらしい不審人物とは不一致に、JFA航空の地上係や客室乗務員たちの内部で処理をされた。と同時に不審人物のレッテルもつけられることを逃れた。結びつかない情報を繋ぎとめておくほど、彼らは人に会いすぎていて、日常的に人の顔を記憶し取り除く訓練を課すのです」
 アイラはコーヒーの味を確かめる、唇の縁、あふれた液を舌でなめ取る。テーブルの顔らしき形はどこか、なぜか、なんだか、理解に及ぶ様子を醸し出していた、彼女の主観である。