コンテナガレージ

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「あら、お久しぶりじゃないの」
「どうも」
「いつもタイミングを見計らってたりして、どうぞ。荷物は?」
「手ぶらです」
「男の人っていいわよね」
「うらやましそうには聞こえませんね」
「あら、やだ。その性格は健在だこと」
「生まれつきだとあきらめてます」
「それで?」
「おまかせで」
「冒険はしないタイプだったか。どのくらい切りますか?お客さん」
「さっぱりと」
「曖昧ねぇ、注文をつけるなら今のうちよ。完成を迎えて、切り直すとあなたの貴重時間を食って、嫌いな散発の時間が長引くの」
「随分な態度をお客に取る」
「あなたにだけよ」
「中傷に込めた本音をここで投げつける、だれかれ構わずは、とっくにシャッターを下ろすか」
「随分な言い草。それでなに、まだ独身を貫くとは言わせないぞ。私を振っておいて」
「どちらかと言えば独身の方があなたの利益だ」
「見くびってもらっては困るわよ。私だって色恋の一つや二つ渡り歩いたの」
「そうですか」
「白髪、多くなったわね。今日もなに?顔は剃らなくていいのね?」
「時間が惜しい」
「どっちの顔で戻る?」
「若い方は当分控えます。世間が許してはくれませんから」
「私の好みは紳士の方だから」
「だから、なんです?」
「アプローチをかけるなら話の流れを読みなさいよ」
「急に引き戻ったら、誰だって困惑します。眠ってもいいですか?」
「冗談。せっかく顔見せておいて、すぐに眠りますとは口が裂けても私は言ってしまうものですか。積もる話の一つや二つ三つ四つぐらい話してくれてもよくってよ」