コンテナガレージ

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ぐるぐる、つるつる、うじゃうじゃ  1

いない。
 性別の判断も不可能に近いな。
 手がかりの身体的な特徴である身長は、新たに支給された防護服がその身体的特徴を消し去ってしまうんだ。手を振ってこっちに歩いてくる友達は、きつねやたぬき、おばけだと、言われている。
 防護服が配られてから、世界では、もうひとつの最大にして実現不可能な問題が持ち上がってもいた。この解決は不可能である、どこかの専門家がインタビューで応えていた、彼女は円柱に寄りかかる、即頭部の金属音が内部に伝わる。
 世界を飛び回るビジネスマンたちは、移動手段の停止に混乱するしかなかった。飛行機を製造企業はこぞってその安全性の再点検を始めたからである。空港関係者、旅行会社、飛行機を所有する航空会社などはこぞって反対を表明、実利は飛行機を飛ばし、お客を運んで得られる。彼らの主張は正しい。ただ、飛行機を製造する企業にとって、この事態は危機でもあり、好機である、という認識をひそかにかみ締めていたんじゃないのだろうかね。
 キクラ・ミツキは目を頭部を覆う頭巾を、まるで勝ち名乗りを上げるかのように、嫌われた光に応え、掲げた。
 ざわつく。
 市民たちの足取りが止まる、ささやきと短い悲鳴。感情を捨てた仮面たちが、振り返り、首をねじり、こちらの胸中を覗き込む。彼女は、自分に無関心なものを選んで探索した。
 どこへいったのやら……。興味を失う市民は活動に戻る、残される私。
 夢だったのかな、ミツキは熱を持ち始めた頬に触れて気を落とす。手の空いた左手は仮面の装着を無意識に行った。屋外で光を浴びる時間は一日十分という定めが設けられてる。健康上の理由だと聞いていた、しかも紫外線がカットされた半屋内の施設内においてである。窓際で猫みたいに日向ぼっこをするようにとのことだ、昔、そう教わった気がする。ただ、直接光を浴びた場合でも短時間、数分ならば皮膚への影響は焼けど程度に収まる。騒ぎ立てることでもないのに、もっといえば往来の激しい都市部の上空は遮光フィルムが一面に張り巡らしてある、雨が通り抜ける隙間から若干光が漏れるが、それも二重三重のフィルムを張ることで問題は解消された。すなわちだ、足を止めて驚くほどの私の行動とはいえないのに、何事にも慎重な気質がこの国では変わらないんだろうな、ミツキは軽く息を吐いて、片足ずつ地面から離した。