コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  1

 なんだか、ゲームの主人公が町人の話を聞いて、イベントが発生する場面そのものではないのか。言いかけたミツキであったが、次男の素顔がはっと、私の息を止めた。彼は兜を頭上に持ち上げていた。
「驚くのも無理はない。お坊ちゃまの顔そのものだからな」
 フリーズ、まさに眼前の出来事が言い表してる。辞書に載せる用例に私は推薦する。
「兄貴とソリもこの顔だ。遺伝子の共通性が高いとトランスポート先に我々が待機していれば、お坊ちゃまは私たちと体を入れ替えつつ、屋外へ自由に動き回ることができるのだ」
「それって、前に私が会ったときは、あなたたちの誰かってこと?誰かの体で中身はあの人だってこと?」
「正面に小屋が見える、切り株の右手」質問の答えは流された。三人ともが同じ遺伝子、すると考えたくはないけど、あの人はこの人たちの兄弟っていう認めざるをえない結論が導かれるんだけれど……。次男の説明は淡々と続く。「ドアノブをつかんだら、絶対に手を離すな、開ける前に離せば命がとられる。信じがたい表現だろうが、現実に引き起こった。祟りが生易しく思えるさ、強力な戒律が発現するのだからな」
「戒律?」
「恋愛要綱七か条」宣言のように次男は斜め上に向かい、声を発した。
 第一箇条・恋愛感情、溺れるべからず。溺れたら最後、後戻りは不可。
 第二箇条・情意はうちにとどめるべし。
 第三箇条・体内にとどまる場合において、その存続は許可される
 第四箇条・発汗を伴う、自然に放出される、時を待て。
 第五箇条・見る見る肌のキメは整う、一時的な効果、永続性を見るな。
 第六か条・満ち溢れる精神力は、対象者以外に向けて散らせ。あくまでも対物質へ。
 第七か条・芽吹いた新風を抱えて、起こしかけた行動を控えなさい。引き返し、体内で想い味わうべし。
「以上がドアノブに手をかけると発動する。仕組みや詳細、発動の所以などなど、詳細の一切は発令から十年ほどたった現在において解読されて気配は微塵も感じない。そもそも、わが家の者たちは戒律を破ったためしはないので」ニヒルな笑い、しわのよった口元は若干あの人とかけ離れた。顔をしまう、彼はまた無機質な兜に戻った。前のほうが良かったのに、とは口が裂けても、裂けそうだったけど、言えないもの。