コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

ただただ呆然、つぎつぎ唖然  2

一人住まいに適したサイズといえる。ペンキの青は数時間前に塗られた佇まい、におい立つシンナーが記憶とリンクして、鼻をついた。屋根を見上げるキクラ・ミツキは、一戸建ての二階部分思わせる建物を睨みつける、お前は私を手を組む気があるのか、それとも見限って最初から罠を仕掛け、からからと背を向けた拍子に笑いを浮かべるのか、生物ではないのだし、人ではないのだ。だが、機械よりは親近感を認められる。
 丸め込まれた論理に見切りをつけて、彼女はドアノブに手をかけた。
 板張りの床、土足厳禁の赤い張り紙はなし、一歩を踏み入れる。うっすら黄土色の空気が肌に張り付く、防護服の再現性はこのときばかりは不要に思えた。危険察知を視野に入れた人の感度はコントロールが禁じられてる、機能が退化をしてしまうという、学者、有識者、科学者たちの見解を世界が取り入れたんだろう。誰も市民レベルの人物に正当な情報など降りては来ない、不貞腐れてると思うな、誤報や操作された情報と真実らしいそれらとの比較を割りと丹念に私が暇な日常における、わがアンテナの感度を確かめているのさ。
 さび付いた鉄製の柵、海外の地下室のイメージと符号、完璧な一致をみせる。なんだか、重なり合うことばっかりが続いて、襲っているような、気のせいか。彼女はついさっきまで、食後のコーヒーを楽しんでいた住人の姿が目に浮かんだ、左手の窓際に微量に注ぐ光を集めるかつて植物だった己を思い出すかのように、テーブルと一脚の椅子に。一脚のみで椅子は売っているものだろうか、テーブルとセットで購入したのか、こんな奥深い森に分け入ってまで住みたい気力とは……、なぜだろう、受け入れる体勢に反旗を翻す意思の抵抗に全力であってるみたいに、足が床と粘着質の恋愛におぼれてる。離れたくない、ずっといたい、君とならいつまでだって、ああ。
 メロドラマ。久しく耳に取り込まなかった単語。
 床と天井は私にセットらしい、兜を脱ぐ、無臭だ、匂いはかすかにカビが香るぐらいで、図書館のうらぶれた茶色いかつては白さが売りだった新作には到底かないっこない。