コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

ただただ呆然、つぎつぎ唖然 5

「わかりきったことを尋ねるのね」
「食べたい物、考えておいて。すぐいく」
「退路は断った。短い時間を有効的な、あの人に対しては有効的ね」サリーは涼やかに確信をえぐった。「私と対等に立つための道筋は一本」
 たちどころに鼓動のピストンが早まる。選べと、奪い取れと、本能で語れと、地鳴りと同質の胡乱な叫びが遠くから、近くでは退避命令をその身を隠したおぼろげな輪郭の奴らが、代わる代わる囁きかける。
 時が迫る。こつこつ、足音を口ずさむサリーは勝ち誇ってテーブルを回っている。嫌がらせ、誘いか、これは。のってはいけない、踏み込んではならない。
 頭を抱える。激しくいやいやをするように、首を振り回した。ショートヘアーがこれ見よがしになびく。命よりも、大それた大儀名文や、位に即した誇りなんて者とはかけ離れた意思。これまで意識にすら上がっていなかった。女性として育てられて身近に勝ち得た付き合いの長い倫理が、髪との接点。また、生えてくる。わかってる、いや決断をしてるふりだ、それは。
 ミツキは、二週目にさしかかるサリーを眺める。私はこの人の頭だけを見てしまってる、頭とは何だろう、シンボル、象徴、一言で言い表せる事柄。もし目が見えていなかったら、彼女は考える。髪を切ったという事実を伝えられるのみで、なんら今後の付き合いや接触、対応に影響はしない、少なくとも私のようにじっと見つめたりは不可能であるんだ。
 答えを。あの人がやってくる。私を見つけてしまう。決めろ。