コンテナガレージ

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至深な深紫、実態は浅膚 1

煙草を二本吸って、目指す会場に着いた。

 彫塑的なコンクリート造は人や植物を思わせる、玄関の水平に伸びた庇はよく見ると五角形だ、奇抜な形に見えなかった。建物の材質と色合いそれと年季が主な作用だろうか、月日が鋭利なとげとげしさを取り去ったのかもしれない。約六十年前の建造物らしい、立ち止まった私にカワニが解説をつけた。二階部分の庇は抉り取ったような曲面を描く。模様、いいや修復の痕が、明るい灰色の線が雷みたいに左右に横断していた。二階窓の長さから、大空間を想像する。玄関口まで足を進めた。左手にぽっかり角の取れた四角い穴が壁に見えた、右手にはない。もう一度建物の二階を見上げた。

 赤と青、両者が互いに際立ちを狙った配色である。

 長方形の窓のキャンバス全体にひし形を配し、内部が重たい青だ、その中央に白線で×印、仕切られた四隅の三角に暗い赤が配置。そして、右上に明るめの赤い丸。にじみ出た東洋風情がコンクリートの全体と相まって異質な空間をかもし出してる。玄関の庇を支える左右のコンクリート柱は見逃していたが、近づいて観察すると、動物が寝そべるように緩やかにその前足を地面に押し付ける格好に思えた。

 ポーチで舞踏のように片手を開くカワニがどうだ、といわんばかりの表情だったため、出かかった賞賛はさっと捨て去って、アイラはそそくさと会場のホールに移動した。

 静謐な空間は聖堂がより近い印象だろう、和紙を貼り付けたような凹凸の内壁と階段が玄関と対峙する形だ、左右に短い通路。

 天井と壁との空間は矩形をあえて避ける曲面の処理を徹底してる。階段右を回って裏を進む、ここが会場であるらしい。

 ぽつんとおかれた演説台が会場設営のスタップによって慎重に運び出されていった、奥側の右から外に出られるようだ、会場視察をひっそり、彼女は始めた。