コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 1

 約一時間の休憩の合間に、ステージは出来上がっていた。ステージ設営に関する要望はカワニに伝え、設営業者に正確に行き渡ったようだ。当然だ、注文は大まかに伝えただけ、再現不可能だったら彼らの仕事は金額を請求する資格はとっくに剥奪されている、注文は最後列から私が見える高さをと、言ったのみ。

 ステージの景色を上がって確かめ、数曲を披露する。信号増幅のゲイン調整を絞りきっても、若干のメーターオーバーの兆候が見られたらしい、エンジニアの指示通り、ギターのボリュームを下げた。観客はゼロ。カワニが出たり入ったり、入り口の両開きドアがかすかに明かりを漏らす。外灯かもしくは隣接するビルの明かりだろう、入り口付近は特に暗い。

 おそらく、この会場はあのドアを閉めると密室。出入り口は表に通じる正面の一箇所。しかし、なぜ密室などという代物を作り出す必要があったのだろう、必然かそれとも偶然が引き起こす産物か、アイラは思った。スマートに相手を葬り去れない理由とやらが不思議だ、それほど密接した人間世界であることは重々承知の上だったろうに。永遠を求めた、ともいえるか。少なくとも、現在の居場所を離れる労力は避けられた、疑いを引き寄せて。自らが離れる選択はとらなかったらしい、私ならば身軽に関係性を断つ。そこにたとえ音楽が絡んでいたとしてもだ。少なからず、音は正直に私の心情を合わせ鏡の要領で映し出す。

 やめた。明日に備えよう。

 アイラはあっさり一人っきりのリハーサルを切り上げて、ホテルに引き返した。エンジニアの了解は取り付け、てである。