コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 2

著しい外壁の腐食、サビと長年の風雨が織り成すえもいわれぬ風貌のビル、その二階が目に入る。古ぼけたかつての事務所、窓に印字されたとっくに立ち去ったありふれた中小企業の会社名。おうど色、金属製の重たい扉を引き開ける。二重顎の中年女性が黒目がちな小さい目で出迎えるも、挨拶は見送られた。妙に長い後ろ髪が一つ、宮仕えの女性を思わせる煌びやかな髪留めで結ばれていた。室内にずらりと棚が並ぶ、簡易な受付を難なく通過した宇佐マリカは、郵送された鍵を腰骨の上下動に応じて跳ねるバッグから取り出す、三九六番の棚を探し当てて、一通の封筒を掴み取った。ちらりと、受付の女性を気にかける。取り越し苦労だった、初めての場所が緊張を高めたのだろう、後ろめたさがはびこるのはおかしな話。彼女は目的を果たした安堵感から、気が大きくなった。受付の女性が女を捨て去ってもなお、美にすがる不快な十にも及ぶ改善箇所を数え上げて、ビルを出る頃にやっと本来の彼女を取り戻したのだった。

 あれが金曜の昼休み。そうだ、あえて語るまでもないが、帰宅後の土曜日に日付が変わったあたりで手紙を読んだ。三回読み返した。稚拙な内容に、最初は驚いたが、それでも多少アイラのことを理解しようと、がんばってはいるらしい姿勢はそれとなく感じ取れた。だからといって、不鮮明な箇所はとことん追求する、誠実ってこういうことよね。