手紙は日曜にポストへ投函して、火曜には届くだろう。
雨が降り止んだ土曜日、宇佐マリカは不毛な議論の対処に追われた。
掻き消えた隣室の生活音。男女の笑い声よりも冷たい滴る雨に、私は擦り寄る。マリカは開け放つ窓に体を挟む、片足を伸ばし、食い込むサッシの凹凸に耐えた。無理な姿勢、風が運んだ雨がしめしめと半身を濡らす、濡れてもいい。室内への侵入はふき取れば事は万事収まる、体だってそうだ。
男と交わりを避けたのはいつからだったろう。
うまく思い出せない、思い出さないように記憶を、たぶん、組み替えたのよ。
純粋な方法を貫く。
それゆえに、アイラ・クズミが私に選ばれた、お眼鏡にかなったんだ。彼女ならばと、曲を聞いた刹那に胸を打ち抜かれたんだ。覚えてる。あのときを。ケーブルテレビの映像だった、どこかのフェスで彼女は、外みたいな雨に打たれて、声を出していた。魂、そのものを。聞こえたの、私には、共感できたの、生きていて、初めて。
思い出すと涙が溢れてしまう。悲しさじゃない。私を、昔の、ずっと昔の私を呼びかけてくれた、応えたら震えた。魂が、会えたねって、私には聞こえた。