コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

本心は朧、実態は青緑 4

 前列の席にアルミのテーブル、その上に音響機材が並ぶ。映像記録のカメラの搬入がないのは、かなり身軽で、小規模な会場に適している。近頃は回線の高速化がもたらす恩恵に随分と胡坐をかいた受け手側の態度が一般的な流れだ。遠方の彼らへ短期的なスパンという需要が生まれるあまり、演出側の短期開催がもたらす日々の負担が対照的に肥大の一途……。私はそこから早々に足を洗った。不規則な登場を与えることで克服をしたと自負する、そう、定期ライブは隔週である、開催間隔期間としては中・長期の位置づけだ。もちろん、まだ実験の段階である。成功とはいえないだろう。しかし、定期開催のライブと比較をした今回の遠征は特別な感触に触れる確証が高い、と私は見積もる。お客の年齢は多岐に渡る。未発表の曲、カバー曲も幾つか滑り込ませた、戸惑った反応は当然だろう、曲名を伝えたのみで詳細は語らない方針を採ったのだ。ネット上での論争や憶測から事実の解明、ひいてはレーベル兼事務所への問い合わせが予測される。ホームページ等では一切の公演内容や曲目に関する諸事項の返信は控える、という文言の掲載を、九州ツアー初日のライブ終了と同時刻にレーベル兼事務所・プリテンスにお願いしていたアイラだ。

 それらの片鱗は見えた、といっていい。

 定期公演とはその辺の食いつきというか、お客の煌き、目の輝き、体が発する期待感はまったく異なった、と先週と火曜、木曜の公演で実感はしてる。アイラは、通路を塞いでしばらく立ち尽くし、それからつま先をパーテーションに向けて身を隠す。

「アキさんに会ったら、伝えておいてください」アイラは上着のパーカーを脱いだ。長袖のシャツはしっとりと重い。張り付く袖を引き伸ばし、片腕を引き寄せて、もう片方も。腕の一部、手首から先を可動域ぎりぎりまで関節を伸ばすと仕切りを越えてしまう、気にするものか。相手はマネジャーである。ハンドタオルが椅子にかかる、これもいつもの用意。

 ツアーグッズで汗を拭いた。タンクトップの下着を着る。それから見上げる高さにはめ込まれた三枚のステンドグラスの左端の真下に位置するハンガーに手を伸ばした。衣装の袖部分は黒い光沢、胸元とお腹とバックが大きな格子柄の深い青がこれも光沢を帯びてる。前に選んだステージ衣装を連想するアイラは、同一のブランドと予測をした。しかし、製作者やコンセプトには無関心でいられる、それが彼女の機能。ジーンズも脱いで、ばさっと一振りしてから、ハンガーにかける。下着姿の時間が長い。焦るつもりはさらさらないのだ。パンツは伸縮性のあるこれまた光沢を角度によって携えた一品。足首ががらりと空く、靴はぺったりと平たい踵の靴である。私の好みは事前にスタイリストが了承済み、どうしても演出上、譲れないときは進言をしてくれるので、とてもわかりやすい、無駄なやり取りを排除できる。アキの機能性は高い、私と彼女の境界域の重なるポイントを常に抑える方針が好感を持てる。