コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 6

 飾りのように鑑賞に特化した予備の一本にギターを取り替えた、ポジションを確認、あたふた伸びる配線を音響スタッフが付け替える。アイラは左手の黒幕から顔を出すエンジニアに目配せ、たっぷりを交換の間を作り出して彼女は、視線を前に移した。見つめる二つの瞳がずらっと横に、奥に並ぶ。日が落ちつつあるのか、ステンドグラスが真価を発揮する時間帯。

 逆算。発生の一瞬手間で最終曲、一曲前、そのまた前、次の前の歌いだしを映像に引き上げた。解放。

 空気を振るわせる。拍手だ、しばらくして鳴り止むだろう、演奏の邪魔、自己欺瞞の象徴だと思ったら、手を止めて。

 奏でる。歌う。パトカーのサイレンが重なる最悪の事態を避けるように、アイラは演奏に取り掛かった。

 

 まったく。悪態をついたのは教会の通路、観客たちの間を通りぬけて、屋外で待ち受ける数台のパトカーを見てしまったときである。幸いにもサイレンは警察の配慮で止まっていたと思われる。隣県から駆けつけた刑事が、うっすらと微笑を湛えて、こぼした。楽しそうだ、事件の発生を喜ぶのも無理はないか、事件が発生しなければ彼らの存在意義は消滅してしまうんだ。

 制服の警官が数名、教会の裏手に走り出す。階段を下りたアイラを、不破が出迎える。

「また、お会いしましたね」明らかに事件の関与を疑う眼差しだ。