コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

本心は朧、実態は青緑 7

「ええ、産業会館のような催し、興行向けに一階ロビーを貸しきったはずです」カワニはショルダータイプに変形したバッグから手帳を取り出す、分厚く、カラフルな付箋が飛び出す、傍目に許容量は越えている。「……あったぞう、やはり、事前に私、調べてありましたよ。防犯カメラは一階のロビーに設置されてます」カワニはマネジャーの仕事を超える現場の把握に人一倍神経を使うのだ。彼の性格がそうさせるらしく、とにかくアイラに関連が認められる場所、訪問先は入念な調査が入る。いつ調べているのか、彼は常に端末で誰かと連絡を取り合っている。うまく人を使いこなす才があるのかも、いいやアイラは否定する。事務所の規模は小さい。彼も私以外にもう一人歌手を抱えるのだ。所属歌手はその二名、無用な人員を雇う企業とは到底言えない、これは明らかだ。

「おっしゃるように防犯カメラに楠井さんの姿は、午後の六時から頻繁に映像に登場します。ただ、まったく映らない時間は最大で約十分の長さ。無線の通話記録は残りません。すなわち、教会に戻り、殺害、グッズ販売のビルに引き返せた可能性は残る」不破はアイラを見た。彼はこっちに意見を求める。あるいは、私を犯人と見立て、反論の機会を証拠を懐に隠しつつ、いざというタイミングで私の主張を完膚なきまでに打ちのめす作戦だろうか、どちらでも構わないが、じっとりとした視線は勘弁してもらいたい。私は、人に興味がない。

「警察は」背後で身を潜めるスタイリストのアキが会話の流れを断ち切った。

 一斉に彼女へ視線が注がれた。アイラもそろりと腰を浮かせた彼女を見上げた。