コンテナガレージ

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本心は朧、実態は青緑 7

「不当な拘束に対する保障が与えられないことに不満を抱いている。事務所スタッフの方たちは一泊の滞在を余儀なくされた。余分な経費は警察が請け負ってくれず、こちらが負担する。いくら会場の外で人が亡くなり、前週はライブ会場で死体が発見されていても、私たちの自由を謳歌する権利は有益に働く」

「そうですかあ、これ以上の拘束は……、今後の捜査に影響しかねないですね」不破は事件を捲る心当たりをわざとらしく匂わせる。「聞き足りないことは後日にということにしましょう」

「いいんですか?ほんとに」、と土井の問いかけはむなしく教会内の空間を厳かにさまよった。不破はそれ以降は無言だった。つまり、帰宅が許されたわけである。

 五人はバンに乗り込み、カワニがドライバーを務めた。助手席にアキが座って、後部座席前列にアイラ、後列に事務所スタッフの楠井と向日が陣取った。

 午後十時を過ぎて、ホテルに着いた。部屋は空いていたようで、フロントで二人の女性は胸をなでおろし、小柄なアキは肩に衣装が詰まるボストンバッグを抱え、ぐったりとやつれた頬のカワニと共にエレベーターに乗車して、各自の部屋で眠りについた。

 柔らかすぎるベッド。

 アイラは髪が乾くまで、事件を除く本日の詳細を頭の中で紐解いた。

 縦に長い客席の評価は課題が残った。

 カバー曲のどよめきはわからない曲、意外な曲、観客も数人が知ってる曲が好ましいと知れた。草原に這う風みたいにざわさらと発見が伝わる光景はおもしろかったな。

 窓際、体を包み込む椅子に座る。低層のホテルから見下ろす。

 階下の明かりは人間の欲の塊に見えた。劣った視力で見られたら良かった。おそらく美しさの代表的言い回しは鳴りを潜めたはず。 

 世界の支配は不文律が牛耳る、だが引き合う見えない糸もまたしかり。