コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

 車はそれから数十分走り、インターを降りた。凱旋よりかは、ふりだしに戻った感覚である。見覚えのある景色が、迫る。

「お昼はどこかで食べますか、それとも……」私はカワニを遮った。

「会場に入ります」

「そうですよね、じゃあコンビニによります。食料を買いだめしないと、会場から二十分ぐらい走らないとコンビニありませんでしたから」

 一キロほど一般道を走り、コンビニに車を止めた。アイラは入り口脇にカイロと軍手とマフラーと灯油ポンプとがぶら下がる棚の最上段の見慣れた薄手の手袋を持ってレジへ、煙草も二つ買う。カワニは私が求めるコーヒーと適当な食料を籠に詰める。

 アキはカイロを買っていた。会場は大型のストーブ四台を借りて温めていたが、夕方の演奏では支障をきたす寒さだった。事前に用意するカイロが切れた、その補給であるのか、アイラはコンビニでいち早く会計を済ませる。運転席のドライバーの視線を浴びて、タバコに火をつけた。車内では吸わなかったのは、喫煙者としての権利を得るため。

 山間部、緑が立ち消える茶色い枝が稜線を覆う。

 山とアイラとの間に視界を遮る建物はなかった。ここから道を数十キロ、山に沿って進むと会場であるかつての産業会館に辿り着く。鳥が頭上で鳴き、過ぎた。もう夕暮れは居場所をなくしていた。