コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 3

 私は黒の洋服を着る、多少袖をまくる。椅子に座っていた。しっとり、ふうわりとした印象をかもし出す曲であるならば、うん、着席もありかもしれない。お客が左右に首を振る。ゆらゆらとたいまつがあれば、より私を照らす明かりが散乱、光と影のランダムな動きは演出に取り入れられるだろうか、確認を舞台設営に取ろう。やはり、首を伸ばすお客がちらほら散見される、互い違いに椅子の列を変えるべきだ、前の列の間に後ろの人の後頭部が登場しないように、座高の高さで席を決めてしまう、これは不公平、チケット予約に身長のデータを要求することは難しい、仮に可能だとしても不公平さは否めない、誰だって、前方の席を望む。

 ライブ後半に意図しない演出に打って出るのも面白い。スタッフをも欺く。

 ちょうどぽっかり客席に円形の空間を作った。そうか、だとすると椅子に座った演奏は後半のこのときに取っておくか、曲の選択はその場で決めるつもり、自分にさえ初披露であるならば、臨場感は本物。プロとしてのクオリティに達することができるのか、意見は彼女の耳を容易く通り過ぎてしまう。なぜなら、この演奏は映像の販売を目的としてはいないからだ。加えて著作権等は、カワニがうまく処理をしてくれるだろう、私が知る必要はないのだ。すべてを知ってからでは、たぶん竦んだ足が一向に前に踏み出す、出さないの堂々巡りに時間が削られるだけだろう。

 実験である。お客も知っている。新しい取り組みだ、衝突を恐れていたのでは、何一つとして良し悪しすら感覚は掴めずに終わってしまうんだから。

 現実にスイッチを切り替えた。失敗。アイラの視覚はここ数週間で見慣れてしまった刑事の姿を捉えてしまった。このまま瞼を下ろしていれば、集中を理由に応対の時間は短かったはず、タイミングが悪い、とはことのこと。運を天に任せるアイラではなかったが、初めて、天を呪った。もちろん、そこに神様がいないことぐらい身に染みてる。