コンテナガレージ

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黄色は酸味、橙ときに甘味 3

 血液にうっすら浸透を許したものの、右下の角を染め、これから全体を、というときに回収されたのだろう。アイラは、紙を見ながら呟いた。おかしな箇所の侵食。とても変わっている。どこから見つかったのか、彼女はもう一箇所不審な点に気がつく、紙を眺めて尋ねた。

「紙に折れ目が見当たらない。アイロンをかけて皺を伸ばしたにしては……随分ときれいな処理に思えますが」

「ポケットから、と私がいいましたっけ?」不破が聞き返す。覚えが悪い、劣化か。それとも耄碌か、試しているのか。

「ええ、はっきりと」

「すいません、間違いです。正しくは彼女の所持品、現場に落ちていたバッグに入っていいました、ご丁寧にファイルに挟んで」前の二件に意識が釣られた、との不破の言い訳に聞こえた。

「女性ですか、死体は?」

「間違えようがありません」自信たっぷり。

「そうならばいいのです、あなたの発言が私にとっては真実に等しい。反射によって透過された色はあなたの色が重なってしまうと、すべて黒く、何が残っていたのか、掬い取れはしない」ステージを降りる、これは私の意志。

「直接確かめたわけでは……待ってください!」

 歩きながら、かろうじて答えた、本来は無言を貫くだろう。無用な期待は二度目を作り出す。アイラは最後に立ち止まって言い放った。床を流れる空気が髪と遊ぶ。

「あなたの意見には従いました。どうか、次はこちらの要件を飲んでください。ドアは背後に用意してあります。私が事前に用意したわけでも、生成したわけでもありませんので、その程度のニュアンスは受け流していただいて、刑事さんが帰るそうです、何かいい忘れた、あるいは言いかけた事件に関する証言を思い出した方はこの機会を逃す手はありませんよー。どなたも、はい、抱えた仕事に忙しいようですので、それでは、さようなら」