コンテナガレージ

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黄色は酸味、橙ときに甘味 5

こうして、開演後のグッズ販売の列に並ぶ、一行を尻目に、私と隣の男性はアンケートの記入を優先する行動に据えた。四つに分かれたブロックの、私はステージに向って左側の手前、その最前列に座ります。前のブロックに二人の女性が、会話に興じながら隣同士で、右斜め前のブロックでは、黄色に近い髪色の女性が丸まるように、空いた隣の椅子をテーブル代わりに書き込み、首をひねる彼女、目を留めた数十秒で二回確認できた。文字の出力、この機会は日常生活ではめったに訪れないと見受けられました、現代につきまとう出力の無駄、紙離れ。いつごろから端末上の活字に慣れ親しむ傾向を許したのか、私にはわかりかねます、知識として獲得した行き先が他者へのひけらかしであるならば、躊躇いなく、ほら、こうして捨ててしまえる。右側のブロックはあまり観測できなかった、私を気にする様子で隣の男性が、舌打ちとあからさまなため息をつく態度、それでも最前列は間を空けて二人、後ろにも離れて、異なる列に数人が着席を選んでいた。私の状況は簡単に説明するとこのように言い表せます。もしかすると、席に留まる方の中に私の手紙を読まれる方がいるやも知れません、別の会場で見かけても、互いに他人を初対面を装いましょうね。それでは、本題に入りたいと思います。長々と書いてしまったのはしかし、ライブに訪れた経緯を解き明かす材料となりますので、ご了承くださいますことを都合よく想像しております。