コンテナガレージ

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赤が染色、変色 1

 日曜の出発は遅れるのが常らしい、前日カワニが伝える週末の大まかなスケジュールは九州の地を踏んでから、まったくの役不足に徹する。警察の拘束を午前中に受けたのち、アイラ・クズミとスタイリストのアキはカワニを鹿児島に残して電車と新幹線にて現地を目指した。一ヶ月間借りる予定のバンはカワニが運転し会場へ運ぶ、と必然的に決まる。ツアーに帯同するスタッフは少数に抑えた事務所の方針である。

 昨日また死体が見つかった。会場の産業会館だそうだ。ホテルを出発する際、車に乗り込む寸前に佐賀県警刑事の不破と土井が顔を見せた、三件の連続刺殺事件の続報かと思ったアイラであるが、四人目の死体が見つかった報告が頼んではいないのに不要にもたらされた。

 しかしそれにしても、なんとも不可思議な状況報告だと、彼女は感じた。

 刑事とアイラが交わす会話、一連の流れは次のようなやり取りであった。

 ホテルの利用客にはアイラのファンが多数宿泊していた。出発予定の午前六時、フロントやロビー、車止めのロータリーの人はまばらだったが、不破たちはアイラにとって不都合を起こしかねない態度を窓越しにほのめかし、バンの後部座席に乗り込んだ、慣れた様子で椅子を倒していた。

 先週の事件を踏まえた警察の張り込みを掻い繰る犯行だったのか、アイラは後部座席後列、衣装に埋もれるアキの反対側の窓、運転席の後方、ホテルの入り口とは反対の道路側に背もたれを乗り越え、無理やり体を押し込めた。真ん中の席はうずたかく積まれる一公演分の衣装カバンがアキの存在を消し去る。