コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

赤が染色、変色 4

 ようやく明日に迫った、息が詰まりそうで恐ろしい。夕食、それにお弁当はいつにもまして豪勢なおかずをふんだんにちりばめた。普段手を抜いていたと、あの人は思うだろうか。ううん、松田三葉は首を振る、詮索はするけれど一方的な意見一つで決め付ける人じゃなかった、それが結婚の相手に選んだ条件だった。三十年も前の出来事、イベント、過去の一ページ、ええ、もう私にとって、あれは通過儀礼のようなものよ、アイラに出会うまでの、そう、いうなれば、暇つぶしだわ。あの人の前で正直にいっそのこと打ち明けてしまっては……さすがに驚くだろうな。

 彼女は金曜日の夕方、自宅の台所に立つ。リビングの電気をつけずに、シンクの明かりに頼ってる。前に怒られたことがあった、この明かりについてだ。あの人は平均的な帰宅時間、その二時間前に家に帰ってきた。そして、開口一番私を捕まえると、頼むから心配をさせないでくれ、家の明かりが消えて、君は電話にも出ない、急病にかかったんじゃないかと疑うだろう、と。

 けれどね、三葉は意見を貫いた。ゆっくり言い聞かせる速度であの人に説明した。

 忙しかったの、精神的にまいっていたの、疲れていたの、怖かったの、後ろ向きだった。

 わかってくれたわ。

 肉体と精神のつながりは体感をはるかに凌駕して内部に迫る、これを案外みんな知らないらしい。

 私はそのときに感覚のギャップに驚いたのよね。

 私がいつも、先行してしまい、あの人は追いかける。

 たぶん、私を家庭に押し込めた要因は外へ向く力を意識的に感じ取ったのね、感度は良い方なのよあの人、と彼女は木べらを手に、人差し指を伸ばして添えて、たまねぎを炒める。

 チャイム。