コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

赤が染色、変色 5

 あいにくの雨、お足下の悪いなか、卑屈な表現に聞こえる感覚を人は取り去ったらしい。一切の世辞を述べないアイラは、雨に降られるまま体を濡らす、会場である大分コンベンションセンターに入った。堂々、表口を潜る。

 土曜日。午前中はセンターの象徴と聞いた展望棟目当ての観光客はまばら、観光地では雨は降らず、いつも晴天であるような錯覚は出発前に取り去ることが肝要だろう、あくまでも彼女の持論だ、ただし旅行を終日愉しみたいと願うならば、取り入れて損はない。アイラは喫煙所に立ち寄り、カワニたちを先に行かせた。建物内部ではいくらか安心と彼はアイラの行動を止めることは諦めてくれる。

 カワニとスタイリストのアキ、それから昨日の夕方、東京から舞い戻った楠井と向日を見送った。

 席に着くなり、サインを求められた。男性だ、比較的若い、年代は私よりも多少上ということろか。押し込めた本心の歪みが顔に現れてる。長年付き合う精神とのバランスをかろうじて保つ感覚はいつまで継続を許すのだろう、アイラは煙草をくわえて、相手の要求をあっさりためらいもなく断った。評判は、どうぞ、思ったとおりに垂れ流すがいい。抽象的解釈が世間一般と同義、という認識に今一度問いかけて欲しい。そう、あくまでこちらの願望であって、要求でも期待でも、命令ではもっとない。各自が本心をさらけ出せる環境下であなたはクリーンでいられる、ネットでも居場所は作れるし、なんならそちらでは優遇され重宝してくれる。偽りなく真摯に胸のうちが、日常とは別の、これが本来の私なのだと声高に自信を持ち、現実との乖離が開けば開くほど叫びは自由な非現実において、わけ隔てなく賞賛の拍手が待ち構えてることだろう。