コンテナガレージ

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赤が染色、変色 5

 次だ、死体について。密室が示めされた。保身が逃走者の存在と施錠された窓からの脱出を明示した一件目の阿部記念館。まるで、マジシャンの手品を解き明かす作業、騙して微笑んでお金を取ってとは、遊園地のアトラクションにも類似、恐怖と期待の狭間、騙されていることを自ら望む、稀有な心持ちと論理解釈だ。そう、ここの展望台もこれの一部。逸れたので事件に引き返す。画像を呼び出した。コンクリート造の外観は海外の思想に感化された形状、画像に目を凝らす、建物の内壁にアカンサスの文様、古代ギリシャ・ローマに良く用いられた装飾、影響を受けるコンクリート造の時代とは大きな隔たり。外観は大木の成長過程、地面に生える幹を思わせる。ホール、死体はシートの上、背中を刺殺され倒れていた、凶器はナイフ、発見時刻と死亡時刻はほぼ一致、発見者または目撃者は死体脇に立つ不審者を見つけたが、小部屋に逃げ込んだ。見取り図を展開、正面から右手の部屋に駆け込み、通報した。その間不審者は何らかの手法を講じて屋外へ脱出を図ったと目される。あくまでこれは、逃走者を目撃した、という証言を正と見なした場合である。ホールの出入り口は玄関を入って目にする階段裏のドアと屋外に通じる、フランス窓の二つである。目撃者はドアの隙間から階段を玄関、ホールのドアの三方を見ており、誰も通っていないとの回答だった。すなわち、犯人の逃走経路は窓に限定される。また、ホール内に隠れる場所はない。しかし、窓の鍵はかかっていた。内側に向く鍵穴、屋外からの開閉機構は設けていない。上下に隙間は見られなかった、加えて鍵穴に不審な真新しい傷跡は見つかっていない、という。昨夜ホテルの部屋にまでやってきて、わざわざもたらした不破の追加情報によると、目撃者の身辺や自宅を調べた結果、疑わしい物証の発見には至らず、当人の怒りを買ったとのことだ。

 状況を覆す知られざる証拠、逃走経路が存在するのか否か。いや、しかしだ……あれは一体どういうことだろう、警察が見落としたとでも、うーん、アイラはやっと遅い起床の太陽光を浴びせかけられ、瞼を起こした。