コンテナガレージ

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赤が染色、変色 6

 朝からそわそわした浮遊感が拭えない、うれしい悲鳴。

 松田三葉は、夫を送り出す二時間前に起床、玄関先に新聞と雑誌をまとめて回収に備える、朝食の支度はいつもの半分、十分で食卓に並べる。洗濯機はあの人が家を出てから回すとして、スピード洗いが二十分、乾燥に二十分と考えると、八時過ぎには、うん、家を出られそう。ライブは夕方の七時開演、開場はその三十分前でグッズ販売は一時間前の六時だから、時間の余裕は十分すぎるほど。

 夫が出勤、洗濯機のスイッチ、普段はめったに使わない乾燥機能をオン、そのまま洗面台で身支度を整えて、昨日のうちにまとめた荷物と共に車に彼女は飛び乗った。

 会場の大分コンベンションセンターを目指す、ステレオはオフにしていた、だってこれから生の声と演奏が見上げるこの目で聞き取れるのだ、味付けはほんの少しで十分、材料そのものの旨さを味わわないと、損なんだから。

 久しぶりの運転も緊張は取り払われた、たぶん高速に乗ったからでしょうね、念のために峠の雪に備えたチェーンもトランクに、物置のコンテナから引っ張り出して載せてある、多少家を出るタイミングが予定もよりずれた要因はこれだった。まあ、五分程度の遅れだ。信号に引っかかった、と思えれば焦りなんて吹き飛ぶし、もっともライブ会場に遅れるには到底値しないちっぽけなアクシデントよ。雨というのが気がかり、私の運転じゃなくって、アイラの体調のこと、あの人は北海道の出身だから寒さに離れているとは、思う。

 松田三葉の車は快調に目的地へ近づいた。二時間ほどで高速を降りて一般道に路線を変える、そこから峠のうねった道を走る、九州を西から東へ縦断する方角。途中、山頂付近の休憩施設で軽食を食べて、駐車場で三十分ほど仮眠を取る、先は長いのだ、それに事故を起こしては元も子もない。