感触は良好、味わいは豊か、感度は抜群に、彩りも滑らか、ひと通り走り抜ける。
熱膨張。気圧の低下かもしれない。展望塔は港を見下ろす高所だった。
うねりの内部に動かない一員を見つける。
届いていない、はたまた好みの曲に出会えていないのか、それともいつでも体感してしまった過去だからか。
もぐりこんだ佐賀県警の不破と一人半の横幅を揺らす土井が観客に悟られないように移動を始める。
ライブは佳境に差し掛かる、後半の合図。
みっしり膨らむ風船たちは飛び出しそうな上昇気質、紐を両手でしっかり掴み、金属のバーに縛り付ける。
しばらくゆらゆらと空調に任せておく。頭を冷やす仕打ち、そう、これからはクールダウン。
過去と未来との狭間を揺らがす。0.012inchの弦を力強く弾き飛ばす扱いに、別れ。
玄関先で出迎える愛玩動物のごとく、
今か今かと開いたドアを見つめ、
時を惜しみながら弾いたそばから次の音を押さえ届ける、
体勢は仁王立ち。
徐々に刑事たちが中央へ。
スローバラードは誰もがしんみりとその場に立ち尽くす、
見上げ、見つめ、見知った顔で返信の視線を求める、
これが通例で通俗なのだけれど、刑事たちは一心不乱に観客たちを掻き分ける。必死の形相。
彼らのほかにもう一人、峻烈な内部振動が揺らめき立っている、異界の生き物のようにこちらを光のない目で睨みつける観客が目についても、通わずに意識と縁切り。